●第二次世界大戦をソ連から見る意味とは
―― 皆さま、こんにちは。本日は「第二次世界大戦とソ連の真実」というテーマで、福井義高先生にお話を伺います。福井先生、どうぞよろしくお願いします。
福井 よろしくお願いします。
―― 第二次世界大戦を考えるときに、今回はソ連というファクターで考えていこうということですが、なぜソ連なのかという問いがあります。第二次世界大戦をソ連から見る意味はどこにあるのでしょうか。
福井 第一次世界大戦がなければソ連という国家は生まれませんでした。結局、第二次世界大戦は、その始まりにソ連がかなりの程度関与しているという意味でも、ソ連の位置は非常に重要です。日本の場合は巻き込まれた感じもするのですが、ソ連は自覚的に、世界戦争に向かって着々と歩みを進めていた側面があります。
―― それはソ連が、いわゆる自分自身の世界戦略として戦争を望んでいたという意味ですか。
福井 そうです。そのために大きな体制の変革をしますが、それを平和的に実現するのは難しいことでした。
―― いわゆる革命ということですね。
福井 そうです。第一次世界大戦のような非常に大きな戦争で国内が混乱することは、やはり共産主義革命にとっては非常に助けというか、重要な契機になったということです。
―― 実際に第一次世界大戦の途中でソ連ができるのも、ロシア帝国自体が第一次世界大戦でボロボロになってしまって、どうにもならなくなって革命に至ったという局面がありますね。
福井 それにプラスして、結局ドイツが、今戦争をしているロシアを倒すために、ボルシェヴィキやレーニンたちをそそのかして援助しました。つまり、外国からの援助プラス戦争によって革命が起こったのです。そのため、始まりはあまりきれいな歴史ではありませんでした。
―― そういう生まれのいわれもあり、ソ連としては同じことをもう一度繰り返すことによって、共産圏の拡大につなげていこうという思惑があったのですね。
福井 そうですね。
●レーニンの「基本準則」にみる革命の準備段階
―― 今回の講座における先生の研究のスタンスは、基本的にはロシアの共産党のスターリンやレーニンが実際に言ったこと、発言したことをベースに見ていくという理解でいいでしょうか。
福井 そうです。例えば、スパイモノだとゾルゲ事件がそうですが、末端のスパイがああした、こうしたということに着目します。そうではなくて、最高首脳のレーニンやスターリンという人たちがどう考えていたかを、推測ではなくて、現在明らかになっている彼らの本当の発言から読み解くことができれば、それに対して陰謀論という批判はできないのではないかと思っています。
―― 実際にレーニンやスターリンがどう考えていたかということですね。
福井 はい。
―― では、早速それを見ていきたいと思います。最初にまずレーニンです。彼はロシア革命を成功させた立役者です。レーニン自身がどう見ていたかという部分については、どういう言葉が残っているのでしょうか。
福井 これから紹介するレーニンの言葉は、『レーニン全集』に出ているので、別に秘密文書でも何でもありません。
まずレーニンの「基本準則」は、帝国主義の間の対立と矛盾を利用して、彼らをお互いにけしかけて戦争させます。彼らがそれによってヘトヘトになった段階で革命を起こします。レーニンが生きていた時代は、ソ連はまだ非常に弱い国だったので、すぐに革命はできません。そのため、資本主義国を徹底的に弱らせて、最後はわれわれが全部総取りしてしまうという発想でした。
―― 先ほども少し出ましたが、言ってみれば、第一次世界大戦の成功体験をもう一度ということですね。
福井 そういうことです。
●レーニンが主張した利用すべき「3つの対立」とは
―― その対立はどういうものだったのでしょうか。
福井 レーニンは「3つの対立を利用するべきだ」と言っています。第一は、日本とアメリカの関係です。レーニン本人の言葉を引用すると、「強大な資本主義が、弱い資本主義が奪いあつめたものをすべてその手から奪取しないであろうと考えるのは、こっけいである」と言っています。つまり、日本も帝国主義の時代に参入していきましたが、その日本が確保したものをアメリカがそのまま手をこまねいて許すはずはないだろうということです。
―― これは、例えば今だと中国市場がいろいろ問題になりますが、そういったことが焦点になるということでしょうか。
福井 そうです。しかもそのとき、「共産主義者は、これらの国の内部で共産主義を宣伝するだけではダメだ」として、「共産主義政策の本筋は、敵意を利用して...