●ソ連のもくろみが外れたキューバ危機
―― それで、実際キューバ危機も起きてくるわけですよね。これは、ソ連にとってはチャンスだったのですか、ピンチだったのですか。
山添 フルシチョフは一時期チャンスだと思っていました。ケネディが1回キューバに介入したわけです。ケネディの前の政権の時に用意されていた計画の実行をケネディが許したということであるのですけれど、キューバの政権転覆をケネディは失敗したわけです。
それに対して、さらにキューバを完全にアメリカを脅かせるような基地にしてしまえばいいとフルシチョフは考えて、キューバに核ミサイルを配備するということを秘密裏に進めていたわけです。それが完成すれば、アメリカは完全にソ連から脅かされる状況になっているということを目指したのであろうといわれています。
―― ただ、それが結局は、挫折するということですね。
山添 途中で見つかってしまったので、アメリカが「これはどういうことだ」と公言することになって、フルシチョフも簡単には引けない状況になってしまいます。それで、ケネディもフルシチョフも、結論を急いではいけないということで、ケネディも軍の提案にあった空爆作戦はやめておいたわけです。海上封鎖という手段をとったわけですけれど、その間に、秘密のチャンネルでケネディとフルシチョフが意思疎通をすることによって、フルシチョフも、この条件だったらもうキューバからミサイルを撤去しますということにしたわけです。
その条件は、アメリカがトルコに配備していたミサイルを撤去するということによって、実はソ連はその取引で利益を得たのです。ですが、それは当時秘密にされていた条件であったわけなので、フルシチョフは、表向きは“冒険をしかけたけれど負けちゃった”ということです。それが、2年後のフルシチョフを辞めさせるクーデターが起こった時に、フルシチョフがダメだと批判された1つの理由になっています。
●核兵器を増やして安定した地位を築いたソ連
―― そうすると、それ以降、ソ連のアメリカへの戦略は変わっていくわけですか。
山添 この危機ですが、1つ間違えばソ連も核兵器を使わないといけないという状況になって、アメリカから撃ち返されることになりかねないという危機があったわけです。ソ連はまだ当時アメリカを圧倒...