国家の利益~国益の理論と歴史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
冷戦期、イデオロギー闘争は核開発競争を伴って加熱
国家の利益~国益の理論と歴史(8)冷戦期の「戦争と平和」
小原雅博(東京大学名誉教授)
第二次世界大戦が終盤に入る1945年2月にヤルタ会談は開かれた。以後、アメリカ中心の資本主義国陣営と、ソ連中心の共産主義国陣営の間で東西冷戦が本格化する。その後の歴史から見て、ヤルタ会談はどう位置付けられるのだろうか。今回は冷戦期の国際政治の経緯とともに核開発競争についても考える。(全16話中第8話)
時間:11分30秒
収録日:2019年3月28日
追加日:2019年7月14日
カテゴリー:
≪全文≫

●ヤルタ会談の歴史的評価


 皆さん、こんにちは。第8回の講義は「冷戦期の『戦争と平和』」についてお話ししましょう。

 ファシズムに勝利した世界には、新たな分断と抑圧が出現します。それを決定づけたのがヤルタ会談です。スターリン、ルーズベルト、チャーチルという三人の指導者の取引によって、ソ連はヨーロッパでもアジアでも大きく勢力を伸ばし、それが戦後半世紀にわたって国際秩序を決定づけることになりました。

 2005年、ブッシュ大統領(ジョージ・W・ブッシュ)は、ヤルタ会談について、「安定のために自由を犠牲にした結果、ヨーロッパに分裂と不安定をもたらした。史上最大の過ちの一つだ」と批判し、ヨーロッパの分割を認めた点でアメリカにも責任があると述べました。ブッシュ大統領の属する共和党は、民主党大統領のルーズベルトが東欧をソ連に売り渡し、その後を継いだトルーマンの弱腰が共産主義の拡大を招いたと批判してきました。

 いわゆる「ヤルタ密約」についても、評価は分かれています。ソ連との対日参戦の密約が当時のアメリカの国益に適っていたかどうか、朝鮮やベトナムの分割、中国の共産化など、その後の歴史を見る限り、アメリカの長期的国益にとってプラスだったとは言えないでしょう。冷戦後30年たった今も冷戦構造の残滓が残る朝鮮半島や台湾海峡の対立と緊張は、ヤルタに発しているといっても過言ではありません。

 この歴史的会談に参加した三人のうち二人は、戦後秩序を構想しただけで姿を消しました。大戦終結の1945年という歴史的な一年が過ぎる頃には、ルーズベルトは没し、チャーチルは選挙に敗れて政界を去り、スターリンのみが戦後に向けた大国間の駆け引きを体験した指導者として新参者を翻弄することになったのです。共産主義は、ソ連の国境を越えてヨーロッパ大陸、そして世界に広がりつつありました。


●鉄のカーテンとソ連封じ込め


 1946年3月、首相を退任したチャーチルは、アメリカのウェストミンスター大学で講演し、ヨーロッパにはモスクワの統制を受ける中東欧とわれら西欧を隔てる「鉄のカーテン」が降ろされ、暗黒時代に逆戻りするかもしれないと警鐘を鳴らしました。そして、自由と民主主義の確立のための団結を訴えたのです。

 チャーチルの講演を傍らで聴いたトルーマン大統領は、1947年3月...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
アメリカの理念と本質(1)西洋文明の行き着いた先と三つの建国
アメリカの理念と本質とは?…まず「三つの建国」から原点に迫る
中西輝政
地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か
地政学をわかりやすく解説…地政学の「3つの柱」とは?
小原雅博
経済社会と「隠れた価値」の行方(1)経済の中の価値
人間の幸福と「価値」…お金以外の「隠れた価値」をどう考えるか
吉川洋
プーチンのロシア―その思想と戦略―(1)プーチン政治の特徴
ロシア皇帝のように悪者を叱る人…プーチンの思想と歴史観
山添博史
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(39)上野誠先生の万葉集講義と現代
【10min解説】万葉集に学ぶ「公務員倫理法」の大失敗?
テンミニッツ・アカデミー編集部
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(6)ピョートル大帝の宗教改革
王座に乗った革命家・ピョートル大帝の「宗教改革」と、ソビエト時代のロシア正教の「弾圧」と「利用」の実情
上月豊久
「良き対話」とは?――哲学から考える(1)対話とは何か――会話・説教との違い
「良き対話」のヒントを哲学から考える…「対話」の大前提とは、そして「会話」「説教」「場回し」とは何が違うのか?
納富信留
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
『源氏物語』を味わう(3)形容詞からの楽しみ方
美しい形容詞の使い分け…『源氏物語』の表現を味わう
林望
「満洲」から考える日本とアジア(9)アヘンの実態と満洲開発
満洲国の開発とアヘン問題…アヘンが資金源となったのは事実だが「同時代の世界」と比較せねば真実はつかめない
宮脇淳子
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(1)国守・大伴家持と地方社会の日常
『万葉集』でわかる奈良時代の貴族と地方豪族の関係と日常…歌人・大伴家持の歌に秘められた国守時代の苦労話
上野誠