国家の利益~国益の理論と歴史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
マキャベリが禁書にもなった『君主論』で説いた思想とは
国家の利益~国益の理論と歴史(3)マキャベリとホッブズによる新「国家」観
小原雅博(東京大学名誉教授)
16世紀のヨーロッパに国益の概念をよみがえらせたのは、マキャベリの『君主論』である。キリスト教的正義や倫理よりも政争に勝つ理性を尊ぶ論は、発表当時は恐れられたが、100年後にはフランスで実践されて、「レゾンデタ(国家理性)」という新語を生み、ホッブズの「主権」概念につながっていく。(全16話中第3話)
時間:8分16秒
収録日:2019年3月28日
追加日:2019年6月30日
≪全文≫

●キリスト教の衰退から国益概念の確立へ


 皆さん、こんにちは。第3回の講義は「マキャベリとホッブズによる新しい『国家』観」についてです。

 古代ギリシャの都市国家の時代から、国家は世界を構成する主要な独立政治社会として存在してきました。

 しかし、ヨーロッパでは、キリスト教共同体としての中世が長く続き、国家は沈滞していました。ようやく16世紀になって、宗教改革や宗教戦争によって、中世の秩序を支えていた宗教的規範意識が希薄化し、ローマ教皇と教会の権威も凋落しました。ヨーロッパ最後の宗教戦争となった30年戦争の終結後、ウェストファリア講和会議が開かれ、歴史的転換点となりました。ウェストファリア体制の下で、主権国家によるヨーロッパ国際秩序が誕生し、国益概念が確立したのです。


●政治のリアルを説いたマキャベリの『君主論』


 こうした変化を先導した人物がニッコロ・マキャベリ(1469~1527)です。マキャベリは、イタリアの都市国家フィレンツェ共和国の外交と軍事を担当する高官で、政治思想家でした。当時のイタリアは周辺諸国の侵攻やイタリア諸勢力の抗争によって混乱の極みにありました。マキャベリも祖国の敗戦と消滅の中で捕われ、拷問まで受けました。そんな過酷な経験が「リアリズムの原型」といわれる『君主論』(1513年)を生んだといえます。

 マキャベリの主張は明確です。「イタリア統一を実現し独立を守るためには、君主たるものは宗教や道徳ではなく、力を信奉すべきだ。力のみが国家存続の唯一の条件である」というものです。

 そう説いたマキャベリの思想には、悲観的現実主義が横たわっています。マキャベリはこう言います。

“「邪悪な存在である人間の世界」では、善良であることにこだわるならば、地位や国家を維持することはできない。「必要とあらば、断固として悪の中へも入って行く術を知らねばならぬ」”

 それは、国家の利益のためにはキリスト教の正義と倫理の原則など無視してよく、「目的のためには手段を選ぶな」とする思想でした。

 ローマ教皇は、この『君主論』を神をも恐れぬ悪魔の教えであると断罪し、禁書としました。しかし、キリスト教世界の権威から独立し、絶対王政国家を確立しようとしていた君主や政治家は「君主論」に現実的な思想的基盤を見いだしました。

...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄
これからの社会・経済の構造変化(1)民主主義と意思決定スピード
フラット化…日本のヒエラルキーや無謬性の原則は遅すぎる
柳川範之
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
こどもと学ぶ戦争と平和(1)私たちに必要な想像力と戦争体験
なぜ戦争が起こるのだろう…大切なのは想像力と生の声
小原雅博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫

人気の講義ランキングTOP10
こどもと学ぶ戦争と平和(6)平和な社会を守るために
チャーチルの名著『第二次世界大戦』に学ぶ真の平和への道
小原雅博
変化する日本株式市場とPEファンド(1)近年急増するPE投資
プライベート・エクイティ・ファンドとは何か…その手法は?
百瀬裕規
編集部ラジオ2026(5)中島隆博先生「AIと人間」を紹介
【10分解説】中島隆博先生《AI時代と人間の再定義》
テンミニッツ・アカデミー編集部
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
新撰組と幕末日本の「真実」(1)近藤勇…教養人の素顔と日野宿本陣
近藤勇と日野宿本陣…多摩の豪農たちの財力と教養力の凄さ
堀口茉純
印象派の解体と最後の印象派展(3)観察と探究のドガ
ドガ《エトワール》…新技法を追求した印象派の代表作品
安井裕雄
ドンロー・ドクトリンの台頭(1)トランプ系論と2025年度版NSS
ドンロー・ドクトリンとは?トランプ系論と西半球の重要性
東秀敏
「Fukushima50」の真実…その素顔と誇り(1)なぜ日本人は突入できたのか?
福島第一原発事故…日本の危機と闘った吉田昌郎と現場の人々
門田隆将
印象派の誕生~8人の主要な芸術家
マネ、モネ、ルノワール…芸術家8人の関係と印象派の誕生
安井裕雄
大谷翔平の育て方・育ち方(7)不可能を可能にする力
「てっぺん」を目指したい――不可能を可能にする秘密とは
桑原晃弥