国家の利益~国益の理論と歴史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
国家の行動を決める「国益とパワー」以外の要因…道義とは
国家の利益~国益の理論と歴史(16)国益とパワーと価値(道義)の関係
小原雅博(東京大学名誉教授)
15回におよんで主に「国益」とパワーを考えてきた連続講義だが、最終回では「価値(道義)」に目を向ける。「パワーか正義か」がよく問われるが、国家の行動は、国益とパワーだけで決定されるわけではない。道義が国益に優越した例として、ナチス・ドイツに立ち向かったイギリスやケネディの決断がある。(全16話中第16話)
時間:9分54秒
収録日:2019年4月4日
追加日:2019年8月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●パワーか正義か、リアリズムかリベラリズムか


 今回が、「国益」に関する講座の最終回となります。これまで、国益とパワーの関係を考えてきましたが、最後に、価値(道義)の問題を考えてみたいと思います。

 国益をめぐる対立や紛争をどう解決するのか。世界大戦は大きな転機となりました。平和のための知的探求と議論が重ねられ、政治や外交にも反映されました。そこでは、人間性を論じる視点の違いから、理性(つまり、法や道義)を重視するリベラリズム(あるいは理想主義)と権力欲(パワー)を重視するリアリズム(つまり、現実主義)が対峙してきました。

 リベラリズムは、国際法や国際世論による平和の実現を目指し、リアリズムは国益とパワーを国際関係の重要な決定要因と位置づけ、勢力均衡による国際秩序の安定を説いてきました。リアリストの主張する通り、道義で平和が実現できるわけではありません。したがって、道義に過大な期待を抱くことは禁物ですが、道義を無視して国際秩序を語ることもできません。

 現実主義国際政治学の開祖とも言われるE.H.カー(1892-1982)も、名著『危機の20年』(1951年)で理想主義(つまり、彼のいうユートピアニズム)を批判的に論じつつも、「力の要素を無視することがユートピア的であるように、およそ世界秩序における道義の要素を無視する現実主義も非現実的なリアリズムである」と指摘し、「政治行動は、道義と力との整合の上に立って行われるのでなければならない」と述べています。

 つまり国家は、国益とパワーという要素だけでその行動を決定しているわけではないのです。こうした認識に立って、国益とパワーと道義の関係について論じてみましょう。


●パワーの道義に対する優越性


 第一に、パワーの道義に対する優越です。

 アメリカのウィルソン大統領が、1919年2月のパリ講和会議において、「国際連盟の道徳的価値にまず最初に、そして主に頼ろうとするのである」と述べたように、ヨーロッパを殺戮と破壊の戦場に変えた第一次大戦を経て、国際秩序は、パワーではなく、道義(正義)によって再建されようとしました。しかし、道義を掲げた国際連盟は大国の参加を欠き、力を結集できませんでした。アメリカは不参加、日独伊が脱退し、ソ連は遅れて参加しましたが、その後脱退し、大戦勃発の39...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か
地政学をわかりやすく解説…地政学の「3つの柱」とは?
小原雅博
紛争が絶えない世界~私たちは何ができるか(1)「戦争の世紀」から再び戦争の時代へ
再び戦争の時代へ――私たちは何を考え、どう動くべきか
小原雅博
半導体から見る明日の世界(1)世界的な半導体不足と日本の可能性
なぜ世界の半導体不足は起きた?台湾TSMCと日本復活への鍵
島田晴雄
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
トランプ政権の極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗

人気の講義ランキングTOP10
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
なぜ「てふてふ」が蝶々?日本語の変遷を追う…まずは万葉仮名から
釘貫亨
「満洲」から考える日本とアジア(10)戦後の「五族」の運命
「五族協和」の真実と満洲国崩壊後の五族の悲劇…満洲人、朝鮮人、露人、蒙古人、漢人らの戦後悲史を直視せよ
宮脇淳子
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
『源氏物語』を味わう(3)形容詞からの楽しみ方
美しい形容詞の使い分け…『源氏物語』の表現を味わう
林望
本番に向けた「心と身体の整え方」(1)ディテールにこだわる
トップアスリートが実践する「自分の高め方」とは…まず集中のスイッチを入れる方法は?
為末大
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(4)認知症と共生社会の実現に向けた対策
その物忘れ、認知症かも…加齢による物忘れとの違いと一番大事なこと
小川純人
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
大国主神に学ぶ日本人の生き方(8)求婚の歌と縁結びの力
大国主神が詠んだ歌…『古事記』の歌の意味と縁結びの力
鎌田東二
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博