国家の利益~国益の理論と歴史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
アメリカに勝てない中国…米中の決定的な違いは何か?
国家の利益~国益の理論と歴史(11)世界の無秩序化と米中新冷戦
小原雅博(東京大学名誉教授)
「国益」を中心に世界史を振り返ってきた本シリーズだが、今回は現在進行中の問題にフォーカスする。それは誰もが注目し、未来への指針と感じている「米中関係」である。ここでは米中の政治モデルの優劣、熾烈さを増す米中貿易戦争に続いて、リベラルな国際秩序の瓦解への憂慮が述べられていく。(全16話中第11話)
時間:15分31秒
収録日:2019年3月28日
追加日:2019年7月28日
カテゴリー:
≪全文≫

●中国はアメリカを追い抜けるか?


 皆さん、こんにちは。今回は「世界の無秩序化と米中新冷戦」について、お話しをしましょう。

 流動化し、液状化し、無秩序化する世界はどこに向かうのでしょうか。その答えは、戦後世界を60年以上にわたってリードしてきたアメリカと、世界の頂点を目指す中国、この両大国の関係がどうなるかにかかってくると言って過言ではないでしょう。

 二一世紀の初めに世界のGDPの32パーセントを占め、中国の8倍の大きさを誇ったアメリカのGDPは、世界の24パーセント、中国の1・6倍にまで低下しました。購買力平価(PPP)ベースでは、すでに中国がアメリカを上回っています。

 経済台頭に伴う国防費の増大と軍事力の増強も顕著です。アメリカとの軍事技術のギャップは縮まっており、新しい戦争の主役となるサイバー・宇宙・電子などの分野での中国の追い上げはアメリカの脅威になっています。

 米中間のパワー・シフトは、かつてない規模と態様で進んでいるといえます。そこで、出て来る問いかけは、中国はアメリカをしのぐ超大国となるのか、という問いです。


●中国がアメリカに勝てない3つの理由


 その可能性はあります。しかし、そう答えるにはいくつかの留保が付きます。

 第一に、経済力はGDPの規模だけでは測れません。

 例えば、市場の大きさがあります。中国の市場も大きくなっていますが、依然としてアメリカが世界最大の輸入国であることは事実です。そして、埋蔵資源。シェール革命によってアメリカは今や世界最大の石油・ガス生産国です。そして、何といっても通貨・金融システムの力、アメリカのドルが世界の基軸通貨であるということです。そして、科学技術力。ここにはノーベル賞の数や知的所有権の保護状況も入ります。

 そして、経済力の軍事力への転化能力や経済成長に伴う社会的コストです。例えば、格差や環境破壊の問題なども考慮する必要があるのです。

 第二に、アメリカの軍事力の強さは、世界の海に展開する11の空母部隊や核戦力以上に、世界に張り巡らされた同盟網にあります。アメリカは、NATO(27カ国)、日本、豪州、韓国などの条約上の同盟国の他、イスラエルのような事実上の同盟国やインド、メキシコ、ブラジルなどのパートナー国を多数有し、世界の70以上の国や地域に600以上の基...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(2)運命・世界・他者
「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味
津崎良典
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
宗教で読み解く世界(1)キリスト教の世界
キリスト教とは?…他の一神教との違いは神様と法律の関係
橋爪大三郎
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政