国家の利益~国益の理論と歴史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ナポレオン戦争後のウィーン体制がもたらした「勢力均衡」
国家の利益~国益の理論と歴史(5)ウィーン体制と勢力均衡
小原雅博(東京大学名誉教授)
近代ヨーロッパに広まった国家理性は、果てなき国益戦争につながった。その反省から、オランダのグロティウスは自然法に基づく国際法の概念を準備し、ナポレオン戦争後のウィーン体制がヨーロッパに国際秩序をもたらしていく。今回はメッテルニッヒを中心に、勢力均衡に注力した人々の方針を学んでいく。(全16話中第5話)
時間:12分05秒
収録日:2019年3月28日
追加日:2019年7月7日
≪全文≫

●近代ヨーロッパが準備した国際法と勢力均衡


 第5回は「ウィーン体制と勢力均衡」について、お話しいたしましょう。

 ここで近代ヨーロッパの話に戻りますと、国家にとって最高の価値を有する「国家理性」のもとで、宗教戦争に代わる国益戦争が際限のないものとなりました。その中で、平和と秩序の維持のための努力もなされました。

 その一つとして、共通の宗教的権威や正義(「神の法」)に代わる国家間のルールとしての自然法があります。「近代自然法の父」と呼ばれるグロティウスは、『戦争と平和の法』(1625年)を著し、神から自立した人間に内在する理性(正義)を根源とする自然法の規範によって戦争を規制しようとしました。その後、遅々とした歩みではありましたが、国際法や国際機関による平和への努力が続けられてきました。

 もう一つは、「勢力均衡」によって戦争を抑止し、国際秩序を維持するシステムです。それは、ナポレオン戦争後のウィーン会議において構築された「ウィーン体制」として成立しました。この歴史的舞台の中心にいたのは、この国際会議を主宰したオーストリアの外務大臣メッテルニッヒです。


●「国家の生存保障」を追求したメッテルニッヒの勢力均衡


 オーストリア皇帝フランツ1世(在位1804-1835)に仕え、会議を取り仕切ったメッテルニッヒは、自国のパワーや地政学を踏まえ、中立を保ち、調停者の役割に徹しました。そして、「連帯と均衡の原則」に基づき、「ヨーロッパに永続的な平和を確保したいという断固たる願望の結果」として、1815年、ウィーン議定書の締結にこぎつけたのです。

 メッテルニッヒにとって、政治や外交とは国家の最も重要な利益についての学問であり、国家の最も重要な利益とは「国家の生存の保障」でした。国家の生存、すなわち、安全保障に限定された形で国益を抑制することが、その後、半世紀にわたるヨーロッパ宮廷外交の基礎となったのです。

 キッシンジャーに高く評価されたメッテルニッヒは、ヨーロッパ外交史に不滅の名を残しました。彼は回想録の中で、「法こそ真の力」が自らの信念であると開陳し、次の通り述べています。

 “「政治」とは、最も高い次元において、国家の生死に関わる利害問題を扱う術である。諸国家よりなる「社会」においては、それぞれの国家は、自分に固有...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
これからの社会・経済の構造変化(1)民主主義と意思決定スピード
フラット化…日本のヒエラルキーや無謬性の原則は遅すぎる
柳川範之
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(6)賴住光子先生ラフカディオ・ハーン論
ラフカディオ・ハーン『怪談』と『神国日本』の深い秘密
テンミニッツ・アカデミー編集部
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
印象派の解体と最後の印象派展(5)ポスト印象派の台頭
ゴーガン、ルドン、スーラ、ゴッホ…ポスト印象派の時代へ
安井裕雄
新撰組と幕末日本の「真実」(3)「日野と多摩」の風土と天然理心流
田舎のヤンキー像は大違い…日野の豊かさと文武両道の気風
堀口茉純
変化する日本株式市場とPEファンド(1)近年急増するPE投資
プライベート・エクイティ・ファンドとは何か…その手法は?
百瀬裕規
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
大谷翔平の育て方・育ち方(7)不可能を可能にする力
「てっぺん」を目指したい――不可能を可能にする秘密とは
桑原晃弥
こどもと学ぶ戦争と平和(6)平和な社会を守るために
チャーチルの名著『第二次世界大戦』に学ぶ真の平和への道
小原雅博
インフレの行方…歴史から将来を予測する(2)明治以降の物価推移とインフレ率
戦後日本のハイパーインフレの真実…その時、何が起きたのか
養田功一郎
印象派の誕生~8人の主要な芸術家
マネ、モネ、ルノワール…芸術家8人の関係と印象派の誕生
安井裕雄