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エンタテインメントビジネスと人的資本経営
「土地勘のあるところ、自分たちの武器を持っていく」
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(5)「チーム戦と新規ビジネス」の要点
水野道訓(元ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役CEO)
6.なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
2025年11月4日配信予定
経営は個人戦でなくチーム戦であり、経営メンバーは「人材の組み合わせ」が大事である。かつて本田宗一郎には藤沢武夫、井深大には盛田昭夫がいたからホンダもソニーも大きくなれた。また、新規ビジネスを始めるときは大事なのは発案者の熱意である。さらに「土地勘のあるところ、自分たちの武器を持っていく」ことも大事で、ソニーがプレイステーションで成功した要因もそこにある。さらに多角化のポイントとして大切なのが「遠心力と求心力のバランス」である。欧米由来の経営に振り回されるのではなく、日本には立ち返るべき経営の心得があることを忘れてはいけない。(全6話中第5話)
時間:12分36秒
収録日:2025年5月8日
追加日:2025年11月3日
収録日:2025年5月8日
追加日:2025年11月3日
カテゴリー:
≪全文≫
●1人のリーダーを決めるのではなく、「人材の組み合わせ」を考えよ
ざっと話をしてきて、最後にこの「人材」という部分にスポットを当てて、エンタメの企業を経営してきた経験の中で思った私の信条――これが私の人的資本経営だと思いますが――、それをいくつかお話ししたいと思います。
まず経営とは個人戦ではなく、私は「チーム戦」だと思っています。先ほどのお話の中で、異能な人と、それをプロデュース、マネジメントする人の組み合わせだと言いました。まさに経営メンバーとは、組み合わせだと思うのです。
皆さんもご存じのホンダ、ソニー。ホンダは本田宗一郎という天才技術者に、藤沢武夫という大番頭の人がいた。それでホンダは世界に出ていけたのではないか。ソニーもそうです。井深大という希有の研究者、学者さん、どちらかというと技術屋さん。それに対して盛田昭夫というマーケッターがいて、この2人の出会いにより、ソニーがダンッと大きくなれた。
さらにソニーの盛田昭夫は、その後、大賀典雄という藝大(東京藝術大学)出身のオペラ歌手、つまり芸術に素養のある人を自分のパートナーとして選んだ。そのことが、ソニーが「ソニー・ミュージック」や「ソニー・ピクチャーズ」といったものをつくっていく、きっかけになったのです。
要するに、人は一人ではなく、必ず組み合わせなのではないか。そう私は思っています。
もう一つ、よく皆さんからお聞きするのが、「次の世代の経営者は誰にしたらいいんだろう」「次のCEO(最高経営責任者)は誰にしたらいいんだ」というものです。このとき、「個人」を扱うので「彼はこういうところはいいけれど、こういうところが悪い」となり、なかなかそれで決まらない。そうではなく、組み合わせなのです。「彼をトップにしたなら、誰を補佐にするのか」「誰をCFO(最高財務責任者)にするのか」。そういった部分で経営は成り立っていくものだと思います。
よくある悪い例です。「自分の後継者を選びたいけれど、なかなかいない」と言って、自分の一番与しやすい後継者、自分の価値観から与しやすい人間を次期の人間にする。これも組み合わせですが、ではその次をどうするのか。そうではなく、自分を除いて「この人間と誰を組み合わせたら、この会...
●1人のリーダーを決めるのではなく、「人材の組み合わせ」を考えよ
ざっと話をしてきて、最後にこの「人材」という部分にスポットを当てて、エンタメの企業を経営してきた経験の中で思った私の信条――これが私の人的資本経営だと思いますが――、それをいくつかお話ししたいと思います。
まず経営とは個人戦ではなく、私は「チーム戦」だと思っています。先ほどのお話の中で、異能な人と、それをプロデュース、マネジメントする人の組み合わせだと言いました。まさに経営メンバーとは、組み合わせだと思うのです。
皆さんもご存じのホンダ、ソニー。ホンダは本田宗一郎という天才技術者に、藤沢武夫という大番頭の人がいた。それでホンダは世界に出ていけたのではないか。ソニーもそうです。井深大という希有の研究者、学者さん、どちらかというと技術屋さん。それに対して盛田昭夫というマーケッターがいて、この2人の出会いにより、ソニーがダンッと大きくなれた。
さらにソニーの盛田昭夫は、その後、大賀典雄という藝大(東京藝術大学)出身のオペラ歌手、つまり芸術に素養のある人を自分のパートナーとして選んだ。そのことが、ソニーが「ソニー・ミュージック」や「ソニー・ピクチャーズ」といったものをつくっていく、きっかけになったのです。
要するに、人は一人ではなく、必ず組み合わせなのではないか。そう私は思っています。
もう一つ、よく皆さんからお聞きするのが、「次の世代の経営者は誰にしたらいいんだろう」「次のCEO(最高経営責任者)は誰にしたらいいんだ」というものです。このとき、「個人」を扱うので「彼はこういうところはいいけれど、こういうところが悪い」となり、なかなかそれで決まらない。そうではなく、組み合わせなのです。「彼をトップにしたなら、誰を補佐にするのか」「誰をCFO(最高財務責任者)にするのか」。そういった部分で経営は成り立っていくものだと思います。
よくある悪い例です。「自分の後継者を選びたいけれど、なかなかいない」と言って、自分の一番与しやすい後継者、自分の価値観から与しやすい人間を次期の人間にする。これも組み合わせですが、ではその次をどうするのか。そうではなく、自分を除いて「この人間と誰を組み合わせたら、この会...