国家の利益~国益の理論と歴史
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
国益の歴史…ペロポネソス戦争の教訓とトゥキディデスの罠
国家の利益~国益の理論と歴史(2)ペロポネソス戦争の教訓
小原雅博(東京大学名誉教授)
国益の歴史は、古代ギリシャに始まる。ペロポネソス戦争の歴史を記したトゥキディデスの『戦史』では、国家の利益や正義がパワーによって決まるリアリズムの世界が克明に描かれている。今回は「メーロス対談」が投げかける疑問と、「トゥキディデスの罠」について考えてみたい。(全16話中第2話)
時間:9分16秒
収録日:2019年3月28日
追加日:2019年6月30日
≪全文≫

●国益の歴史は古代ギリシャ「ペロポネソス戦争」に始まる


 さて、「国益」には長い歴史があります。ここからは、国益の歴史的変遷を振り返ってみましょう。そこから、今日の世界の変化や混乱の奥底に潜む問題の本質が見えてくると思います。

 今日の第2回目では、「ペロポネソス戦争の教訓」について、取り上げてみます。

 国益の歴史は、まさに古代ギリシャから始まります。古代ギリシャの歴史家であり将軍であったトゥキディデスが著した『戦史』(ペロポネソス戦争史)は、今日も色あせないリアリズムの古典といえます。

 紀元前431年から27年間の長きにわたって続いたペロポネソス戦争は、ギリシャ全土を破壊と殺戮に陥れました。アテナイの将軍として戦場に身を置いたトゥキディデスは、将来への教訓として残す意図を込めて、この戦争を克明に描いたのです。


●トゥキディデスの『戦史』が語る「メーロス対談」


 その中で特に印象的な記録は、スパルタの植民都市国家メーロス島に遠征し包囲したアテナイ軍の使節と、メーロスの高官の交渉を描いた「メーロス対談」です。この対談において、トゥキディデスは、国家の利益や正義がパワーによって決まるリアリズムの世界を生々しく描きました。そのくだりを紹介してみましょう。

 メーロスの高官は、アテナイとスパルタの間での中立を望み、理性と正義を訴え、攻撃が神や人民を怒らせ、スパルタ軍の介入を引き起こすだろうと申し立てます。しかし、アテナイ使節は、「強者と弱者の間では、強きがいかに大をなし得るか、弱きがいかに小なる譲歩をもって脱し得るか、その可能性しか問題とはなり得ない」と一蹴します。

 それでも、メーロス側は説得に努めます。降伏して奴隷になるか、抵抗して滅びるかの選択を迫られる中で、最後にメーロス代表は言います。「七百年の歴史を持つこのポリスから、一刻たりとも自由を剥奪する意思はない。…スパルタの加勢のあらんことを頼みに、国運安泰に尽くしたい」。こう返答して、アテナイ側に平和条約締結と軍の撤退を申し入れたのです。

 アテナイ使節は、「スパルタや、運や希望を信じて何もかも賭けて疑わぬとあれば、何もかも失ってしまうのも止むを得まい」と述べて、城攻めを続けました。そして、とうとうスパルタ軍は来ませんでした。メーロスはついに降伏...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
これからの社会・経済の構造変化(2)経済的利益と社会課題解決の両立へ
利益か社会課題解決か…かつての日本企業の美点を取り戻せ
柳川範之
和歌のレトリック~技法と鑑賞(1)枕詞:その1
ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?
渡部泰明
「進化」への誤解…本当は何か?(9)AI時代の人間と科学の関係
科学は嫌われる!? なぜ「物語」のほうが重要視されるのか
長谷川眞理子
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(8)秀長の死の影響と秀吉政権の瓦解
「家康対奉行」の構図は真っ赤な嘘!? 秀吉政権瓦解の真相
黒田基樹
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIは間違いが分からない…思考で大事なのは訂正可能性
中島隆博
独裁の世界史~未来への提言編(1)国家の三つの要素
未来を洞察するために「独裁・共和政・民主政」の循環を学べ
本村凌二
歌舞伎はスゴイ(4)歌舞伎のサバイバル術(後編)
江戸時代の歌舞伎にも大波乱が…どうやって生き残ったか
堀口茉純
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎