国家の利益~国益の理論と歴史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
冷戦後の世界の変化…9.11同時多発テロが変えたもの
国家の利益~国益の理論と歴史(10)冷戦終結と9.11の衝撃がもたらした変化
小原雅博(東京大学名誉教授)
1989年、ベルリンの壁の崩壊が冷戦終了を告げ、ヨーロッパはEUを拡大・進化させる。一方、湾岸戦争の勝利で国際正義を実現したアメリカが経済的にも世界の覇者となる。しかし、冷戦下に進行した世界の軍事化・暴力化は、2001年の同時多発テロの呼び水となった。9.11以降の世界が直面する問題の原因を探っていく。(全16話中第10話)
時間:10分06秒
収録日:2019年3月28日
追加日:2019年7月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●冷戦後の「歴史の終わり」という楽観論


 皆さん、こんにちは。第10回の講義では「冷戦終結と9.11同時多発テロの衝撃がもたらした変化」について論じてみましょう。

 東西対立という冷戦構造の下では、何が脅威で、何が国益かは明確でした。しかし、東側陣営(音声では「東西」)が崩壊すると、脅威や国益は見えにくくなり、国際関係も流動化しました。グローバル化と情報技術革命がそうした変化を複雑で不透明なものにしたのです。冷戦後の国際政治の変化とグローバル化の流れを振り返ってみましょう。

 1989年11月9日、東西冷戦の象徴であったベルリンの壁が崩壊しました。フランシス・フクヤマは、この歴史的転換を「歴史の終わり」と呼びました。つまり、人類が自由民主主義に向かうという世界の流れが主流となって、理性に支配される歴史の究極的な目標は自由であるとの哲学者ヘーゲルの歴史観が実現されるということです。

 フクヤマの予想した通り、楽観論と「フラット化する世界」は、民主主義と市場経済が広がる平和と繁栄の世紀を約束したかのようでした。ヨーロッパでは、国家の主権や内政不干渉を柱とするウエストファリア・システムを乗り越えようとするヨーロッパ連合(EU)の拡大と深化が続きました。それは、ヘーゲルを含むドイツ観念論への系譜をつくったイマヌエル・カント(1724-1804)が著書『永久平和のために』で描いた「自由な諸国家の連合」という夢に向けて前進するかのようでした。


●市場経済化するロシア、「パクス・アメリカーナ」の時代


 ロシアでも民主化と市場経済化の進展が期待され、G7サミットへの参加も認められました。唯一の超大国となったアメリカは世界を率いて湾岸戦争で勝利し、国際正義を実現しました。「世界の警察官」としてリベラルな国際秩序を支える意思と能力が世界に示された時でした。朝鮮半島や台湾海峡など冷戦の残滓が消えない東アジアでも、インドシナ諸国も加盟した東南アジア全域を包摂したASEAN、改革・開放を推進した中国などを中心に高い経済成長が続きました。

 そんな中で起きた1997年のアジア通貨・経済危機は、域内の経済相互依存の高まりを認識させました。事実上の経済統合が進む中で、制度的統合への構築も始められ、その年に始まったASEAN+3(ASEAN+日中韓)首脳会議は、翌年、定例化さ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
日本を復活させる国家戦略(1)戦後の復興戦略と日本経済の凋落
「所得倍増」はなぜ成功したか…日本経済の回復のヒント
島田晴雄
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
トランプ政権の極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾
経済社会と「隠れた価値」の行方(1)経済の中の価値
人間の幸福と「価値」…お金以外の「隠れた価値」をどう考えるか
吉川洋
資産運用の思考法…経済や市場の動きをどう読むか
市場予測のポイント…短期・中期・長期の視点と歴史的洞察
養田功一郎
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(35)鶴見太郎先生の公開収録を振り返る
【10min紹介】鶴見太郎先生の公開収録を振り返る・・・お寄せいただいた声
テンミニッツ・アカデミー編集部
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(4)認知症と共生社会の実現に向けた対策
その物忘れ、認知症かも…加齢による物忘れとの違いと一番大事なこと
小川純人
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
「満洲」から考える日本とアジア(8)日貨排斥と満洲事変の原因
なぜ満洲事変が起きたか…激烈な日本排斥と朝鮮人迫害、さらに一方的な条約無効化に直面した日本人の決断と失敗
宮脇淳子
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
国際地域研究へのいざない(7)明治維新の評価と人材の蓄積
幕末・維新の歴史から学ぶ「人材の蓄積の重要性」
島田晴雄