国家の利益~国益の理論と歴史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
キューバ危機でケネディとフルシチョフが見せた指導者の理性
国家の利益~国益の理論と歴史(9)キューバ危機と世界益・人類益
小原雅博(東京大学名誉教授)
1962年のキューバ危機は、人類が第三次世界大戦に最も近づいた13日間と呼ばれる。それは核戦争を意味するだけに、事態に直面したケネディとフルシチョフの両首脳は、両国が可能な限りの譲歩と歩み寄りを模索した。自国の利益とともに、「人類の利益」を尊重することが政治指導者の理性を磨いたのである。(全16話中第9話)
時間:10分01秒
収録日:2019年3月28日
追加日:2019年7月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●人類危機の13日間、アメリカが取り得た6つの選択肢


 第9回の講義では「キューバ危機と世界益・人類益」についてお話しします。

 1962年、ソ連がフロリダの鼻先にあるキューバに核ミサイル基地を建設していることを知ったアメリカは、カリブ海で海上封鎖を実施します。米ソ間の対立・緊張が高まり、世界は核戦争勃発の危機に直面します。

 ソ連のフルシチョフ書記長がミサイル撤去を発表するまでの13日間、ジョン・F・ケネディ大統領はこの危機にどう対処するか、14~15人のメンバーからなる国家安全保障会議執行委員会(EXCOMM)を断続的に開催しました。そこで議論を重ねて、6つの選択肢がテーブルに上がります。

1.何もしない
2.ソ連の譲歩を引き出す外交(トルコからのミサイル撤去との取引)
3.カストロに働きかける(キューバ・ソ連関係の見直しを要請する)
4.海上封鎖
5.キューバのミサイル基地への空爆の実施
6.キューバへの軍事侵攻


●ケネディ大統領の選択と外交努力


 空爆を主張する声が強まる中で、ケネディ大統領は、熟慮の末、海上封鎖を選びます。それは、「何もしない」(1)と「武力攻撃」(5か6)の中間的措置といえます。アメリカの強い意思を示すには十分でありながら、空爆ほどには拙速でもなく、バランスの取れた選択といえます。

 ケネディの決断は、アメリカへの核の脅威を取り除こうとすれば人類の破局に直面するという未曽有の心理的圧力に直面しながら、極めて限られた時間と不十分な情報の中で行われました。にもかかわらず、アメリカの安全という「死活的国益」と人類の生存という「世界益」を守るという外交目標を達成したのです。

 ケネディ政権は、国際社会の理解を得るための多国間外交に努めました。国連安保理やNATOの支持を得た他、米州機構(OAS)では海上封鎖(アメリカは「隔離」と呼んだ)の法的正当性を確認することでアメリカの立場を強化したのです。国連安保理で初めて世界に示されたキューバ・ミサイル基地の写真は効果的でした。アメリカは国連の場を通じて、海上封鎖の具体的範囲を示すなど、ソ連との意図せざる衝突を避ける努力もしました。多国間主義は、道義や国際法上の正当性を高め、国際世論を味方につける上で有用だったといえます。


●発揮された米ソ両指導者の理性


 キューバ危機の...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
地政学入門 ヨーロッパ編(1)地図で読むヨーロッパ
ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係
小原雅博
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
紛争が絶えない世界~私たちは何ができるか(1)「戦争の世紀」から再び戦争の時代へ
再び戦争の時代へ――私たちは何を考え、どう動くべきか
小原雅博
政治思想史の古典『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ(1)二人の思想家
モンテスキューとルソー…二人の思想家の共通の敵とは?
川出良枝
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩

人気の講義ランキングTOP10
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(6)ピョートル大帝の宗教改革
王座に乗った革命家・ピョートル大帝の「宗教改革」と、ソビエト時代のロシア正教の「弾圧」と「利用」の実情
上月豊久
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
優れた経営者の条件(1)スキルとセンスの違い
経営者のセンスは担当者のスキルとは全く違う
楠木建
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
認知バイアス~その仕組みと可能性(3)創造のバイアス〈中編〉
「サラダ記念日」誕生秘話でわかる “じわじわ”のホント
鈴木宏昭
「良き対話」とは?――哲学から考える(2)良き対話のための「問い方」の技法
良き対話のための「問い方」の技法とは?…ソクラテス流に「YES、NO」で答えさせ、お互いの考えを確認して進む
納富信留
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(1)老年病科と高齢者の疾患・病態の特徴
頻尿、低栄養、転倒、誤嚥、フレイル…増える老年症候群と高齢者の疾患・病態の特徴
小川純人
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
生成AI「Round 2」への向き合い方(2)ハードで動くCopilot
Microsoft Copilotの革新性…想像がつかない世界に
渡辺宣彦
バッハで学ぶクラシックの本質(1)リベラルアーツと音楽
音楽の父バッハ…なぜ「音楽」が西洋でリベラルアーツなのか?
樋口隆一