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核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる

ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題

橋爪大三郎
社会学者
情報・テキスト
『核戦争、どうする日本?――「ポスト国連の時代」が始まった』(橋爪大三郎著、筑摩書房)
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国際連盟の反省を踏まえて、第2次世界大戦後に設立された国際連合(国連)。国連に加盟する大国間が連帯し、世界の平和を守るために設置されたのが安全保障理事会(安保理)という枠組みであった。だがいまや、安保理常任理事国に与えられた特権によって、かえって戦争を引き起こしやすくなっている。それはどういうことなのか。国連の機能を麻痺させている構造的問題を解説する。(全5話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14:59
収録日:2023/11/01
追加日:2023/12/25
キーワード:
≪全文≫

●国連安保理のせいで、戦争が起きかねない?


―― 皆さま、こんにちは。本日は、橋爪大三郎先生に「『ポスト国連』と9条・安保」というテーマでお話をいただきたいと思っております。橋爪先生、どうぞよろしくお願いいたします。

橋爪 はい。よろしく。

―― ポスト国連ということなのですけれども、そもそも日本人の間では比較的に、国連信仰というか、国連は大事だという意見も強いように思うのです。しかし、この間、アメリカとロシアの対立が深まったり、あるいは、アメリカと中国の対立が深まったりする中で、本当に国連が機能できるのかどうか。

 ウクライナでの戦争やパレスチナでの衝突などを見ていても、実際、解決能力があるのかどうかということで、「ポスト国連」というようなこともいわれていると思うのですけれども、この現在の国際状況における国連の位置付けについて、先生はどのようにお考えでしょうか。

橋爪 国連がどのようにできたかと考えてみると、第2次世界大戦の反省を踏まえているわけです。

―― はい。

橋爪 第2次世界大戦が防げませんでした。第2次世界大戦の前には、「国連(国際連合)」ではなく「国際連盟」というものがありました。国際連盟は、戦争を防ぐ目的でできたのに機能しなくて、第2次大戦が起こってしまったのです。

 機能しなかった理由というのはいくつかありますけれども、1つは主要国が入っていなかったということです。まずアメリカが入っていなかった。それから日本が脱退してしまった。関係ない場所で戦争を始めても、国際連盟は指をくわえて見ているだけというようなことになったわけです。その後、第2次世界大戦の戦勝国というものがこの二の舞は避けたいということで、「国際連合(国連)」というものをつくったわけです。

 国際連盟とどこが違うかというと、常任理事国というものがあって、5つの大国ががっちり、スクラムを組んで世界の平和を守ろうということです。この5つの国というのは、第2次世界大戦の戦勝国です。

―― はい。

橋爪 つまり、ともに戦った仲間です。だから、また悪いやつが出てきたらやっつけてやろう、というわけです。

 それから時間がたってどうなったかというと、国連のはずが国際連盟とよく似た状態になったということです。

―― はい。ちょうどこの安全保障問題ですね、ポスト国連をどうするか、ないし、これからの世界情勢につきましては、橋爪先生が『核戦争、どうする日本?――「ポスト国連の時代」が始まった』という本でお書きになっていらっしゃいます。こちらをベースにしながらお話を伺いたいと思いますけれども、このご本の中でまず非常に印象深かったなと思ったのは、「この安全保障理事会(安保理)のせいで戦争が起きる、むしろ起きかねない事態になっているのではないか」という問題提起されていることです。

 これは大変興味深く思ったのですけれども、国連の本来の目的からすると逆な気もするのですが、これについてご説明いただけますでしょうか。

橋爪 国連というのは、実はまだ1回もちゃんと機能したことがないと思います。

―― はい。

橋爪 どうしてかというと、国連憲章を見ると、国連軍というものをつくると書いてあります。国連軍には統合参謀本部というものができることになっていて、それは常任理事国の参謀部というものが協力して束になることです。スクラムとはそういう意味ですね。ところが、国連軍は成立していないのです。国連軍があって初めて国連は世界の警察官として平和を守ることができるのですけれども、まず軍がないわけです。

 それから、常任理事国というのは結束が固い(という前提です)。これを担保するために「拒否権」というものがあります。他の4カ国が「いい」と言っても、1カ国が「いや、ダメだ」と言うと、決議ができないことになっているわけです。

 これは結束しているときはいいのです。「結束するようなことを、みんなで決めましょう」ということですから。

 でも、5つの常任理事国の間で本当に利害が対立している問題は、どんな決議もできないということになります。つまり麻痺してしまうわけです。動きがとれない。行動もできないし、頭も動かない、国連はこういう状態です。

 5大国のどれかが起こした戦争、どれかが起こしそうな戦争について、手も足も出ません。これは国連の構造的問題です。今はそうなっています。

―― はい。(ただ)朝鮮戦争の時は国連軍ができたではないかという話もあります。あのときは、たしかソ連がボイコットしているという状況だったということですよね。

橋爪 あれはソ連がうっかりしたのでしょうね。(ソ連が)いなかったから、残りの4カ国で好きなようにできたのですけれども、これはラッキーですね。そういうことはもうないで...
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