●「専守防衛」の軍事力に特化した日本の危険性
―― そういう中で、今もお話がありましたけれども、日本の自衛隊は、いわゆる装備や軍事力という点でいったら、もういろいろな国の軍隊と比べても引けを取らないくらい強いのではなかろうかというような意見もあります。先生は自衛隊というものが軍隊とは違うということを、『核戦争、どうする日本?――「ポスト国連の時代」が始まった』の中でもかなり強調されていらっしゃいましたけれども、それはどういう点になりますでしょうか。
橋爪 個々の装備や兵器の性能などを単独で取り出してどちらがいいとかいっても、それはあまり意味がないのです。ゼロ戦とグラマンではどちらが優秀かとか、その手の話であって、国の軍事力というのは「1つのシステム」で、全体としてどう機能するかという点が大事です。
例えば、しばらく前までの自衛隊は専守防衛という考え方でできていたから、相手が攻撃してくるまでは反撃できないし、そして、自分の領海、領空、領土でもって、武力行使を行うということになっていた。要するに、相手国と日本の領空、領海、領土で戦争するわけだから、民間人が大変な危険にさらされるわけです。
―― はい。
橋爪 それ以外の武器、例えば、反撃能力のための少し射程の長いミサイルとか、それから、船でも少し相手を刺激するような能力の高い兵器、空中給油機などというものは全て持ってこなかったのです。そういう問題かと思います。(それらは、)核兵器は別ですが、アメリカが持っていて、使っているものです。通常兵器であれば、アメリカのほうが壊れたときに日本のものを使う、日本のものが壊れたときにアメリカのものを使うというのが一番合理的だから、戦略や戦術で連続的にしておくというのが一番双方にとって利点があるように思います。
●「国防軍」にしてシビリアンコントロールを
―― もう1つの問題として、いわゆるネガティブリスト、ポジティブリストの問題もあると思うのですが、ここはやはり大きいでしょうか。
橋爪 はい。日本の軍隊というのは、法律の立てつけとして戦争しないことになっているから、戦争になった(戦時になった)場合に必要な行動を取ることができないので、実は軍隊としての体裁をなしていないのです。
―― はい。
橋爪 これは大変問題です。だから、戦力として相手に対抗するためには、軍とい...