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「憲法9条に自衛隊を書き込む」という改憲案は「姑息」

ポスト国連と憲法9条・安保(4)自衛隊と憲法改正の問題

橋爪大三郎
社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授
概要・テキスト
『核戦争、どうする日本?――「ポスト国連の時代」が始まった』(橋爪大三郎著、筑摩書房)
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憲法によって交戦権を放棄している日本は、「専守防衛」に特化した自衛隊をこれまで組織してきた。しかし、現実的に国際的な危機が高まる中で、有事の際に日本は対応できるのだろうか。さらに、やみくもに改憲に反対するなど、憲法を神聖視するのはおかしい。憲法は神が決めたものではなく、不完全な人間が制定したものだからこそ、修正していかなければいけない。神聖なのは「自由や人権」などの理念なのだ。そのようなことを考えると、「憲法に自衛隊を明記する」といった改憲案は「姑息」以外の何物でもない。(全5話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:29
収録日:2023/11/01
追加日:2024/01/16
キーワード:
≪全文≫

●「専守防衛」の軍事力に特化した日本の危険性


―― そういう中で、今もお話がありましたけれども、日本の自衛隊は、いわゆる装備や軍事力という点でいったら、もういろいろな国の軍隊と比べても引けを取らないくらい強いのではなかろうかというような意見もあります。先生は自衛隊というものが軍隊とは違うということを、『核戦争、どうする日本?――「ポスト国連の時代」が始まった』の中でもかなり強調されていらっしゃいましたけれども、それはどういう点になりますでしょうか。

橋爪 個々の装備や兵器の性能などを単独で取り出してどちらがいいとかいっても、それはあまり意味がないのです。ゼロ戦とグラマンではどちらが優秀かとか、その手の話であって、国の軍事力というのは「1つのシステム」で、全体としてどう機能するかという点が大事です。

 例えば、しばらく前までの自衛隊は専守防衛という考え方でできていたから、相手が攻撃してくるまでは反撃できないし、そして、自分の領海、領空、領土でもって、武力行使を行うということになっていた。要するに、相手国と日本の領空、領海、領土で戦争するわけだから、民間人が大変な危険にさらされるわけです。

―― はい。

橋爪 それ以外の武器、例えば、反撃能力のための少し射程の長いミサイルとか、それから、船でも少し相手を刺激するような能力の高い兵器、空中給油機などというものは全て持ってこなかったのです。そういう問題かと思います。(それらは、)核兵器は別ですが、アメリカが持っていて、使っているものです。通常兵器であれば、アメリカのほうが壊れたときに日本のものを使う、日本のものが壊れたときにアメリカのものを使うというのが一番合理的だから、戦略や戦術で連続的にしておくというのが一番双方にとって利点があるように思います。


●「国防軍」にしてシビリアンコントロールを


―― もう1つの問題として、いわゆるネガティブリスト、ポジティブリストの問題もあると思うのですが、ここはやはり大きいでしょうか。

橋爪 はい。日本の軍隊というのは、法律の立てつけとして戦争しないことになっているから、戦争になった(戦時になった)場合に必要な行動を取ることができないので、実は軍隊としての体裁をなしていないのです。

―― はい。

橋爪 これは大変問題です。だから、戦力として相手に対抗するためには、軍とい...
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