“アメリカとは何か”~米国論再考Vol.1
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
トランプはアメリカ停滞期の大統領…日本は判断ミスに注意!
“アメリカとは何か”~米国論再考Vol.1(3)テクノロジーの限界と可能性
東秀敏(米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー)
アメリカという国を設計したのは、独立宣言と米国憲法だった。歴史を持たないアメリカは、世界史上初めて政治哲学のみに頼った人工的な政体をつくり上げた。これは一種の発明であったが、発明には限界点があり、その度にアメリカは新たな発明を生み出し、難局を乗り切ってきた。日本はこのアメリカの転換にうまく対応できない傾向があるので、今からアメリカの本質を理解し、アメリカの転換に備えることが必要である。(全3話中第3話)
時間:8分45秒
収録日:2020年6月11日
追加日:2020年11月5日
カテゴリー:
≪全文≫

●アメリカという発明の設計図が米国憲法


 次に、独立宣言と米国憲法について説明します。独立宣言は、大英帝国に対する檄文なのです。民主左派のジェファソンが起草して、宗主国に対する抑圧された植民地の現状と新理念を訴えたものです。生命、自由および幸福の追求を含む不可侵の権利を主張しています。最後の幸福の追求権が最も重要で、これが米国精神の発揚を促します。幸福の追求は常にテクノロジーを通じて行うということなのです。

 米国憲法は、政府の暴走抑制の必要性、および民主主義に対する深い不信に根ざした統治論理に基づいています。その結果、民主共和政という矛盾した政体が形成されました。民主主義で平等を約束しながら、実際には共和政的なエリートによる統治を想定しているのです。
イギリスでは当時から現在に至るまで、不文憲法を維持しています。しかし、米国は歴史を持たないため、憲法の明文化を必要としました。その結果、純粋に政治哲学のみに依拠し、米国憲法自体がテクノロジーともいえるような、人工的政体を発明しました。

 先ほども指摘したように、米国憲法は発明の設計図のようなものなのです。米国憲法は、ホワイトハウス、議会、最高裁判所が自動的に力を抑制し合う、高度に機械的な制度を生み出しています。「三権分立」とも呼ばれますが、各機関が均衡と抑制をうまく保っているのです。トランプ大統領は独裁的などといわれますが、これは憲法を理解していない発言です。実は、トランプ大統領は、十分な力を持たない人なのです。その背景には、米国の建国の父が政府の暴走を最も危惧し、そのため非常に力のない政府を生み出したことがあります。米国憲法こそが、13独立州が連合して幸福を追求したときに利用したテクノロジーなのです。


●古いテクノロジーが限界を迎えると新たな発明が生まれる


 テクノロジーには、有効期限ともいえる限界点が必ずあります。しかし、それゆえにいろいろな可能性というのをはらんでいるともいえるのです。テクノロジーの限界点は、時間と共に必ず訪れます。米国の場合は、まずテクノロジーを発明して、難局を乗り切ることが目指されます。しかし、新しく発明された政体は必ず限界に達して、次の発明が成功するまで停滞期間が発生します。新たな...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子