●平和を象徴し、自由を守るための強い意志を示す国章
この建国の理念を理解するためには、究極的には独立宣言、米国憲法、そしてフェデラリスト・ペーパーなどの、当時の文献を読むことが必要ですが、一般の方にはなかなか理解しがたいと思います。この点は、建国の父が一番理解していました。
そのため、彼らはアメリカの国章、つまり国のシンボルに、彼らの建国の理念を記号化して残したのです。アメリカの国章は二つあるのですが、両方とも1ドル札に印刷されています。まず表面について解説します。
まずスライドの左からですが、白頭鷲は力と権力を象徴するものです。白頭鷲の視線の先には、平和を象徴するオリーブの枝があります。また、白頭鷲がくわえている紙のようなものには、「E Pluribus Unum」とラテン語で書いてあります。これは、「多数でできた一つ」という意味で、13独立州を束ねて一つの国になったという歴史を象徴しています。つまり、アメリカは、さまざまな要素の集合体だということです。実はこのラテン語句は、アメリカの正式なモットーなのです。連邦政府と州政府が対立しながら統合しているという、矛盾した関係を象徴しています。
次に、オリーブの枝は、13の実と、13の葉から成っています。これらは独立13州を象徴しています。盾に目を転じると、白は純潔、無邪気さ、過去や常識に囚われない楽観的未来志向を象徴しています。アメリカ人の気質をうまく形容しています。赤は強固、頑固といっても良いかもしれません、そして勇猛さを指すもので、守るべきものは力で徹底的に守り抜くという強い意志を表しています。このように、幼稚さと勇猛さという逆説的で、相反するような性格が、アメリカを象徴しているという意味が、赤と白の対比に込められています。さらに、盾は勇猛さと徳を象徴し、13の線からなる縦の縞模様は米国13州を表しています。
次に矢も13本あります。この矢は、自由を守るための暴力装置、軍隊を象徴しています。自由を守るためなら暴力も構わないという強い意志を表します。
次に、一番上の星はダヴィデの星です。これも13の星が描かれています。この星は、表向きには世界史初めての、市民自治による国家を象徴しています。しかし、実は裏の背景があるといわれています。独立戦争時に、アメリカ側を金銭的にサポートしたユダヤ人事業家がヨーロッパにいました。その中でも、ハイム・ソロモンという投資家がジョージ・ワシントンの軍事作戦をサポートしました。勝った暁に、ジョージ・ワシントンがソロモンに対して投資の見返りに欲しいものを尋ねたところ、われわれの民族の象徴をあなたの国の国章に入れていただきたいという返答があったそうです。そのため、建国の父の多くはキリスト教徒であったにもかかわらず、アメリカの国章には、ユダヤの星が描かれている、という歴史的背景があるといわれています。
●創造主によって見守られている国
表の解説は以上で、次に裏の国章を見ていきたいと思います。
まずスライドの左からですが、ピラミッドの上には目があります。これは「プロビデンスの目」といいます。プロビデンスとは、摂理のことです。プロビデンスの目は、創造主の目とも呼ばれます。プロビデンスの目は、米国という発明を見守る役割を果たします。つまり米国の発明は神がかりなもので、人間の力を超越したものによって守られているという強い信仰があるのです。
まず、一番上のラテン語は、「Annuit Cœptis」と書いてあります。これは「創造主の摂理は我々の取り組みを支持した」という意味です。現在進行形で訳すこともあるのですが、ここでは完了形で訳しています。我々の取り組みとは、アメリカの建国のことを指し、そしてアメリカの発明をこれからも繰り返していくことを指します。この壮大な事業は、神によって支えられているということなのです。
ここで重要なのは、米国憲法を読んでも分かる通り、建国の父は神(God)という表現を用いておらず、代わりに創造主(Creator)という表現を用いています。神と創造主の違いは非常に重要です。神という表現をしてしまうと、ヤハウェ、キリスト、アッラーなど、一神教でも宗教ごとに異なる神が存在するために問題が発生します。これらを統合するような概念は、創造主なのです。アメリカは創造主によって見守られた壮大な人間の事業である、と考えられているのです。
色に注目すると、背景色が青になっており、警戒、忍耐、正義を象徴しています。また、ピラミッドの階層は13段で、これは13の独立州を表しています。そして世界初の市民自治による共和政政体を象徴して、実は頂上が未完成な状態なのです。この点に注目す...