●日本人のアメリカ理解をはばむ二つの理由
―― 皆さま、こんにちは。
中西 こんにちは。
―― 本日は中西輝政先生に「アメリカの理念と本質」というテーマでお話をいただきたいと思います。中西先生、どうぞよろしくお願いいたします。
中西 中西でございます。どうぞ皆さん、よろしくお願いいたします。
―― 中西先生、アメリカというと、日本にとって、もちろんいうまでもなく、とても大事な国だと思います。しかし、日本人は案外アメリカのことをよく知っていないのではないかという部分もあります。中西先生は以前こちらの『アメリカ外交の魂 帝国の理念と本能』(集英社)という本をお書きになりました。こちらは2005年の刊行ですが、その後文藝春秋の「文春学藝ライブラリー」として再刊されています。
この本に限らず、(先生は)これまでアメリカについて、いろいろな形での分析や提言をしてこられました。その見地から、アメリカをどのように見ていくかということで今日はぜひお話を伺えればと思っています。
まず中西先生にお聞きしたいのは、アメリカの原点といいますか、そもそもアメリカとはどういうものなのかということです。
中西 はい、それでは今の問題提起に沿ってお話をさせていただきます。
日本の近代を語るとき、アメリカという存在を抜きにしては全く本質が見えてこない。そういう側面があるぐらい、大きな大きな存在としてのアメリカ、これを日本人はもっと肌身で理解するような形で、アメリカ観というものをしっかりと持つべきだろうと常にいわれます。しかしながら、今日に至るまで、非常に皮相的なアメリカ観で終始してしまっている。
そこには、しかし大きな理由があったのだと私は思います。その一つはやはりキリスト教という問題です。アメリカを理解するときに宗教を抜いて理解することはできません。しかし、日本人にとって宗教というテーマは、話題として非常に苦手というか、ずっと宗教に関する議論をしてこなかった歴史的土壌があります。
そういうことで、他の国──例えば中国、韓国、あるいは東南アジア、ロシア、インドなど、いろいろな国を学ぶときに、やはりいろいろな宗教が問題になるのですが、アメリカを語るときに、キリスト教の問題ほど重大な問題はない。
それから、もう一つはアメリカに「西洋文明の行き着いた先」という意味があるこ...