アメリカの理念と本質
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ピューリタンの2つの柱と3つの人生哲学とは
アメリカの理念と本質(3)ピューリタンの特性と影響
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
ピューリタンは「聖書を信じろ」という柱と、「予定説」という考え方にもとづき「勤勉を尊ぶ」という柱で支えられている。そこから「謹厳、勤勉、謙虚」という人生哲学が生まれ、富の蓄積を尊ぶ倫理が資本主義の精神を産んでいく。アメリカにおいて、その精神は特に顕著で、20世紀の覇権を握り、21世紀にも大きな影響を残している。(全10話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分34秒
収録日:2024年6月14日
追加日:2024年9月3日
カテゴリー:
≪全文≫

●ピューリタンの2つの柱と3つの人生哲学


中西 彼ら(植民者たち)は、それぞれの生まれ育った町や村で教会に通いますが、その教会は初期のピューリタンたちがアメリカ大陸にもたらしたプロテスタント信仰(そのものでした)。非常に敬虔で、信仰深く、戒律に厳しく、聖書にあくまで忠実であることを旨とした。この信仰が神の救いにつながると信じ、勤勉というピューリタン信仰のもう一つの大きな柱に支えられていました。

 もう一方の柱は、「聖書を信じろ」ということです。他の誰がなんといおうと、信仰は個人一人ひとりの心の中のものである。その心を磨いてくれるのは聖書にある神のことばだけである。それが、ピューリタニズムの一つの柱です。

 もう一つの柱として、「神は全知全能の存在だから、誰が救われて誰が救われないかということはあらかじめ決まっている」という、「予定説」という考え方があります。。この考え方に則ったアングロ・サクソンのピューリタニズムでは、現世において本当に救われている人は、その兆しを神がその人の中に映し出すことがある、といいます。それは、勤勉な人、職業の倫理に一路邁進するような、非常に清廉で道徳的で勤勉な、そして富を蓄積する人なのです。

 (ピューリタニズムにおいては)お金を蓄積することは決して悪いことではない。それまでのカトリック教や他の宗教では、往々にして金儲けは悪いことという偏見というか、近代的な経済感覚からいうと、因習的な考え方がありました。

 ところが、ピューリタニズムはそうではない。神の恩寵を受けることになる人、すなわち神の救いははじめから決まっているが、それが誰であるかを証明するのは勤勉さ、職業の倫理、あるいは社会的に道徳的な存在として人生を生きている人たちである、と。

 そういうことで、「謹厳・勤勉・謙虚」がピューリタニズムでは大事になる。この三つが、社会を生きていく人生哲学として、非常に強調されるわけです。


●ピューリタンが産んだ資本主義の精神と倫理


中西 ここから出てくるのが資本主義の精神、つまり富を蓄積していく経済の問題です。ここに着目して、なぜ近代世界ではアングロ・サクソン(イギリスやアメリカ)が覇権を握るのか、あるいは民主主義や自由主義の先進国として世界をリードし続けるのか。このことに関心を持ったドイツの社会学者にマックス・ウェーバー...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ