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ピューリタンの2つの柱と3つの人生哲学とは

アメリカの理念と本質(3)ピューリタンの特性と影響

中西輝政
京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者
概要・テキスト
ピューリタンは「聖書を信じろ」という柱と、「予定説」という考え方にもとづき「勤勉を尊ぶ」という柱で支えられている。そこから「謹厳、勤勉、謙虚」という人生哲学が生まれ、富の蓄積を尊ぶ倫理が資本主義の精神を産んでいく。アメリカにおいて、その精神は特に顕著で、20世紀の覇権を握り、21世紀にも大きな影響を残している。(全10話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:09:34
収録日:2024/06/14
追加日:2024/09/03
カテゴリー:
≪全文≫

●ピューリタンの2つの柱と3つの人生哲学


中西 彼ら(植民者たち)は、それぞれの生まれ育った町や村で教会に通いますが、その教会は初期のピューリタンたちがアメリカ大陸にもたらしたプロテスタント信仰(そのものでした)。非常に敬虔で、信仰深く、戒律に厳しく、聖書にあくまで忠実であることを旨とした。この信仰が神の救いにつながると信じ、勤勉というピューリタン信仰のもう一つの大きな柱に支えられていました。

 もう一方の柱は、「聖書を信じろ」ということです。他の誰がなんといおうと、信仰は個人一人ひとりの心の中のものである。その心を磨いてくれるのは聖書にある神のことばだけである。それが、ピューリタニズムの一つの柱です。

 もう一つの柱として、「神は全知全能の存在だから、誰が救われて誰が救われないかということはあらかじめ決まっている」という、「予定説」という考え方があります。。この考え方に則ったアングロ・サクソンのピューリタニズムでは、現世において本当に救われている人は、その兆しを神がその人の中に映し出すことがある、といいます。それは、勤勉な人、職業の倫理に一路邁進するような、非常に清廉で道徳的で勤勉な、そして富を蓄積する人なのです。

 (ピューリタニズムにおいては)お金を蓄積することは決して悪いことではない。それまでのカトリック教や他の宗教では、往々にして金儲けは悪いことという偏見というか、近代的な経済感覚からいうと、因習的な考え方がありました。

 ところが、ピューリタニズムはそうではない。神の恩寵を受けることになる人、すなわち神の救いははじめから決まっているが、それが誰であるかを証明するのは勤勉さ、職業の倫理、あるいは社会的に道徳的な存在として人生を生きている人たちである、と。

 そういうことで、「謹厳・勤勉・謙虚」がピューリタニズムでは大事になる。この三つが、社会を生きていく人生哲学として、非常に強調されるわけです。


●ピューリタンが産んだ資本主義の精神と倫理


中西 ここから出てくるのが資本主義の精神、つまり富を蓄積していく経済の問題です。ここに着目して、なぜ近代世界ではアングロ・サクソン(イギリスやアメリカ)が覇権を握るのか、あるいは民主主義や自由主義の先進国として世界をリードし続けるのか。このことに関心を持ったドイツの社会学者にマックス・ウェーバー...
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