●米国派経済学の原点をさかのぼる
米国大統領制兼議会制研究所の上級研究員を務めております、東秀敏と申します。よろしくお願いします。
本日の話題です。“Make America Great Again”、つまりトランプの思想の潮流であるMAGA運動というものがあるのですけれど、その原点の一つに米国派経済学があります。これがどういう風に最初スタートしたのかを今回は見ていきたいと思います。
問題提起として、トランプ第2次政権の保護主義経済政策の背景にある思想とは何か。これを突き止めていくと、米国派経済学で“The American School”というものがあり、これが原点の一つです。
これが始まったのが建国から1840年代ぐらいまでのアメリカの歴史における初期の期間にあたり、今回の発表では、焦点としてどういう時代背景があって、どういう問題意識が存在して、どういうビジョンが作られて、そしてどういう政策につながって、どういう影響をもたらしたか、この要点を中心に見ていきたいと思います。
要旨としては、米国の成長と繁栄は米国派経済学が作った土台に存在します。トランプ第2次政権の経済政策の理解には、この米国派経済学に関する知識が必要不可欠であり、今の主流派の経済学は、イギリスが作ったアダム・スミスの国富論などに基づくものに立脚していますので、米国派経済学は今の経済学において非主流派です。
この米国派経済学は、実はトランプ政権を理解するのに必要不可欠なもので、2人の人物が米国派経済学の土台を作ったわけなのですけれど、まず1人目がアレキサンダー・ハミルトンです。彼は建国の父の一人ですが、18世紀末に米国派経済学――ハミルトン経済学ともいわれるのですけれど――これを作りました。
実際に彼が行った政策に「ハミルトンの経済プログラム」といわれるものがあります。これを実施して強力な米国派経済学の土台を作りました。彼がやった政策は詳しく後ほど見ていきたいと思います。
次に出てきた人物がハミルトンより1世代ぐらい後なのですけれど、ジョン・クインシー・アダムスという大統領がいまして、そのときの国務長官を務めたヘンリー・クレイという方です。この人が米国派システムというフレームワークを作り、...