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惑星、衛星探査への宇宙の旅…困難をいかに克服したのか?

未来を知るための宇宙開発の歴史(4)衛星探査機や惑星探査機の開発

川口淳一郎
宇宙工学者/工学博士
概要・テキスト
有人宇宙飛行を実現させたと同時に、衛星探査機や惑星探査機もアメリカやソ連によって開発され始める。それによって火星や金星、また木星以遠の惑星の情報がもたらされるようになっていく。これら惑星探査機の開発にはどのような難題があり、それをどのように克服していったのか。(全14話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:08:57
収録日:2024/11/14
追加日:2025/08/12
カテゴリー:
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≪全文≫

●「有人」のアメリカ、「無人」のソ連


―― 前回は人間がどのように宇宙を飛ぶに至ったかというお話でしたが、今回は衛星あるいは惑星探査機のお話ですね。

川口 そうですね。最初にお話するのは、旧ソ連の月着陸機「ルナ9号」です。この打ち上げを、ソ連は歴史上初めて、アポロ開発計画(アメリカ)の真っただ中の1966年に行ないます。アポロ計画は有人の着陸機ですが、ソ連の場合は無人の着陸機です。世界で初めて月面に着陸した宇宙機は、ソ連のルナ9号だったのです。

―― 右に機器が開いた写真ありますが、この状態で着陸したというイメージですね。

川口 そうです。一見、ミカンの皮を開いたような状態ですが、これには、ある意味で合理性はあります。実は脚で着陸することは大変難しいのです。そういう意味でルナ9号は、転がってもきちんと着陸するという思想にいる。そのため、形としては奇妙に思われるかもしれませんが、ある種、合理的なのです。「はやぶさ」などの探査機も全て同じですが、脚で着陸することはとても難しい。

―― 「ひっくり返ってしまったら、どうしよう」と。

川口 ええ、ひっくり返るのです。ひっくり返ってもミッションを成功させなければいけないので、こういった形の探査機をつくったのです。旧ソ連がこれを打ち上げなければいけなかった理由には、ケネディ米大統領の演説が背景にあります。やはり「アメリカに先を越されるわけにはいかない」というところがあるので、この活動に踏み出すわけです。「無人」だという点が非常に重要です。

 次は、「ルノホート1号」という、これも非常に奇抜な形をしていますが、人類初めての月面移動探査車です。これが打ち上がったのは、すでにアポロが月着陸したあとの1970年のことなので、「初めて月面に」というわけではありません。ただ、旧ソ連の活動として、「アメリカは有人で行うかもしれないが、ソ連は無人で探査ができる」ことを示す大きなメッセージでした。


●火星探査、金星探査もソ連が先行していたが……


川口 月だけではなく、金星、火星に最初に到達したのも旧ソ連でした。

 写真左が金星着陸機「ベネラ7号」で、右が火星着陸機「火星3号」です。金星は表...
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