●イーロン・マスク率いるスペースX社が行っていること
―― では続きまして、前回の最後に民間ロケットもずいぶん飛び始めたという話がありました。今回はその「民間」ということに光を当てた回ですね。
川口 スペースシャトルを民間企業が開発するようになることを期待しているわけではありません。民間の企業としては大きな投資リスクを避けて歩むべきものだし、大きく収益を上げるか否かは別として、会社として各企業が宇宙事業を行っていくためには既存の技術を活用していくしかないわけです。そのため、画期的なロケット開発をするというよりも、それを使ったビジネスに目を向けようということです。それが「クルードラゴン」(スペースX社)や「スターライナー」(ボーイング社)といった民間宇宙船です。
その一つの応用先が、通信衛星「スターリンク」です。イーロン・マスク氏が率いる宇宙開発企業スペースXが(通信衛星を宇宙に)大量に運んで、たくさんの衛星を軌道に周回させる活動を行っている。大量の衛星を軌道に飛ばし、一斉に切り離して運用していくわけです。ただ、「これでよいのだろうか」とは正直なところ思います。
―― それはどういう点においてでしょうか。
川口 スペースXは「(通信網を)カバーできればそれでいいじゃないか」という考え方に立っていますが、技術的にいえばもっと効率的な良い方法を考えるべきです。また、これらを政府が追跡してデブリ(役割を終えた衛星の残骸)の観測をしなければいけないことになるわけです。
そういうことを考えると、つまり決して民間企業は責任を持っていません。民間企業がトラッキングしているわけではなくて、軌道上にある障害物を維持・管理しているのはアメリカ国防省なのです。
―― ああ、そういうことになるのですか。(スペースX社は)そこまでの管理をしていないわけですね。
川口 自分で管理を行っているわけではない。「そのような管理はどうでもよくて、とにかくたくさんばら撒けばいい」という話はやや違うのではないかと思います。衛星が何千個とか一万個などと飛ぶようになると、将来、宇宙開発で人間を輸送するときには、そういったなかを、かいくぐって飛ばなければいけなくなるわけです。その意味で、「これでいいのだろうか」という思いは正直あります。
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