●冷戦崩壊後、宇宙開発の目的を失ってしまった
―― 前回は、木星や土星などの外惑星に衛星を飛ばして探査するお話でした。続きまして、次世代に向けて「人間がいかに宇宙で活動していくか」というお話です。ここはどのような内容でしょうか。
川口 有人宇宙活動は特に何かが変わるわけではないのですが、キーワードはやはり、冷戦が終わる頃から「宇宙開発は何のために行なうのか」ということが問い直されるわけです。実際に、アポロ計画以降、月には行っていません。それは行く理由が見つからないからです。冷戦時代は月に行く価値があったのですが、冷戦が終わると「巨額をかけた宇宙プロジェクトを行う必要があるのか」という話になってきます。
冷戦崩壊の頃に始まるものが「国際宇宙ステーション」です。国際宇宙ステーションの大きな意義としては、もちろん「平和を分かち合う」という大きな意味があるのですが、もう一つは「宇宙開発をするための大きな動機は一体何だろうか」「人間が行うべきことが本当はあるのだろうか」という問いに対する答えです。「人間が滞在する宇宙開発」というものをきちんと見せる必要があるわけです。その典型的な一つの形が、国際宇宙ステーションだ、ということになるのです。
ここでスペースシャトルが登場します。正確にはスペースシャトルは冷戦が終わる前に登場したのですが、国際宇宙ステーションに物資や人員を運ぶというスタイルの宇宙開発が始まるわけです。そのため、「スペースシャトルが運ぶ最大の物資は人間」と言われていて、「人間を戻してくる」ことがスペースシャトルの宇宙から物資を持ち帰るものであるわけです。
荷物だけを運ぶのであれば人間が行く必要はないわけです。したがってスペースシャトルの位置づけは、「人間を往復させること」でもあった。そして、「どうして宇宙に人間が有人滞在をしなければいけないか」という問いへの答えの一つが「国際宇宙ステーションという活動だ」という定義がなされて、そういった位置づけのもとで有人宇宙活動が行われるようになります。ここが、それまでの冷戦時代とは違うわけです。
スペースシャトルは冷戦中の1981年に初飛行するのですが、これで再利用の宇宙船の活動がどんどん進んで行くかという...