未来を知るための宇宙開発の歴史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
水平離着陸で宇宙へ、近未来のロケット像と進む技術開発
未来を知るための宇宙開発の歴史(12)宇宙推進技術はどこまで進化したか
川口淳一郎(宇宙工学者/工学博士)
ロケットは縦に発射されるのが通常思い描かれる姿であり、それが常識だったが、より快適に、より安価に飛ばすために新たなエンジン開発も進んでいる。また、宇宙空間においても、より広範囲に、あるいは長時間活動するための技術開発も進んでいる。それらにはどんな技術なのか。スクラムジェット、ホールスラスタ、光子推進などを取り上げながら解説する。(全14話中第12話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:8分16秒
収録日:2024年11月14日
追加日:2025年10月12日
カテゴリー:
≪全文≫

●ハイパーソニック…ロケット以外の「推進方法」


―― 続きまして、今回はロケット技術についての話になります。

川口 「Propulsion」は「推進」という言葉です。いわゆるロケットとは写真にあるような姿だと普通は思うでしょう。現在は性能の良さから液体水素を使ったロケットが主流なロケットのあり方で、わが国もそれを運用しています。ですが、それ以外の推進方法は、実はいろいろとあるのです。

 地上から打ち上がるロケットは大きな推力がなければいけないので、宇宙空間だけで稼働するエンジンとはやや違っています。資料にあるのは、「ハイパーソニック」という極超音速機です。

 左下にある「スクラムジェット」とは、超音速燃焼のジェットエンジンを指しています。メカニカルなタービンやコンプレッサーがあるわけではなく、気体がそのまま入ってきて自ら圧縮され、燃焼を伴って排出されていくというエンジンです。極超音速エンジンとは、マッハ数でいうと5以上の速さで飛ぶのに適したエンジンのことです。

 これは日本ではまだ完成していません。ロシア、中国では完成しているという報道もありますが、アメリカも実験段階です。アメリカの目標は2030年までにこれを実用化し、防衛に提供すると言っています。まだそういった段階です。

 航続時間が長く保てなくてもよいのであれば、日本でも極超音速(エアブリージングエンジン)の実験はしています。また、北朝鮮がロシアのそれを運用し「極超音速ミサイル」の実験をしている可能性がある。このように実験的には、距離の短い技術は登場していますが、まだ実用化には至っていません。

 ただ、いずれこういったハイパーソニックのエンジンの機体が、宇宙へ輸送する第1段目のロケットに変わっていくでしょう。したがって、機体が水平離着陸をして宇宙に出かける時代が将来像なのです。いつまでも縦積みにしたロケットが垂直に上がっていくという姿なのではない。水平離着陸で、第1段目はジェットエンジンに変わっていくべきです。この目標を忘れないようにしたいところです。

―― ジェットエンジンということですから当然、宇宙空間ではなく大気があるところで使うのですね。

川口 はい。2段目以降はロケットになります。

―― これはコ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
航空機事故ゼロをめざして(1)フラッター現象とは何か
零戦の開発段階で起きたフラッター現象…事故の教訓とは
鈴木真二
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
徳と仏教の人生論(6)物事の本質を見極めるために
「境地は裏切らない」とは?禅の体験から見えてきたもの
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(3)カントの公共性論
いま学ぶべきカントの挑戦~なぜ「公開性」が重要なのか
齋藤純一