ロケットは縦に発射されるのが通常思い描かれる姿であり、それが常識だったが、より快適に、より安価に飛ばすために新たなエンジン開発も進んでいる。また、宇宙空間においても、より広範囲に、あるいは長時間活動するための技術開発も進んでいる。それらにはどんな技術なのか。スクラムジェット、ホールスラスタ、光子推進などを取り上げながら解説する。(全14話中第12話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
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●ハイパーソニック…ロケット以外の「推進方法」
―― 続きまして、今回はロケット技術についての話になります。
川口 「Propulsion」は「推進」という言葉です。いわゆるロケットとは写真にあるような姿だと普通は思うでしょう。現在は性能の良さから液体水素を使ったロケットが主流なロケットのあり方で、わが国もそれを運用しています。ですが、それ以外の推進方法は、実はいろいろとあるのです。
地上から打ち上がるロケットは大きな推力がなければいけないので、宇宙空間だけで稼働するエンジンとはやや違っています。資料にあるのは、「ハイパーソニック」という極超音速機です。
左下にある「スクラムジェット」とは、超音速燃焼のジェットエンジンを指しています。メカニカルなタービンやコンプレッサーがあるわけではなく、気体がそのまま入ってきて自ら圧縮され、燃焼を伴って排出されていくというエンジンです。極超音速エンジンとは、マッハ数でいうと5以上の速さで飛ぶのに適したエンジンのことです。
これは日本ではまだ完成していません。ロシア、中国では完成しているという報道もありますが、アメリカも実験段階です。アメリカの目標は2030年までにこれを実用化し、防衛に提供すると言っています。まだそういった段階です。
航続時間が長く保てなくてもよいのであれば、日本でも極超音速(エアブリージングエンジン)の実験はしています。また、北朝鮮がロシアのそれを運用し「極超音速ミサイル」の実験をしている可能性がある。このように実験的には、距離の短い技術は登場していますが、まだ実用化には至っていません。
ただ、いずれこういったハイパーソニックのエンジンの機体が、宇宙へ輸送する第1段目のロケットに変わっていくでしょう。したがって、機体が水平離着陸をして宇宙に出かける時代が将来像なのです。いつまでも縦積みにしたロケットが垂直に上がっていくという姿なのではない。水平離着陸で、第1段目はジェットエンジンに変わっていくべきです。この目標を忘れないようにしたいところです。
―― ジェットエンジンということですから当然、宇宙空間ではなく大気があるところで使うのですね。
川口 はい。2段目以降はロケットになります。
―― これはコ...