月のサンプルリターンから出発し、近年では惑星まで飛び、試料を持ちかえるのではなくその場で探索して情報を送るという、発展系の惑星探査が進んでいる。地球からはるか遠くの惑星や天体の探査が進んでいるのだ。その結果、例えば地球に水をもたらした起源など、生命の歴史を紐解く情報が得られるようになっている。(全14話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
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●「無人探査」に旧ソ連は非常に力を入れていた
―― 続きまして、宇宙探査のお話です。
川口 そうですね。すでに月、火星、金星への探査についての話は出たのですが、これがサンプルリターンや高度な宇宙飛行との関係としてどうつながっていくか。月着陸から出発して外惑星探査も含めた惑星探査について、宇宙開発後半の歴史をたどっていきたいと思います。
―― サンプルリターンとは、まさに「はやぶさ」がそうでしたが、地球外の天体や惑星の試料を持ち帰ってくることですね。
川口 そうです。着陸すればいいだけではなく、サンプルリターンとは着陸のさらに先を行く話です。サンプルを持ち帰らなくても、遠隔の場所に飛んでいってこれまで行ったことがないことを行うのも応用の宇宙探査です。ですから、発展型の宇宙活動にはどういうものがあるかについて紹介します。
写真は、旧ソ連の無人月探査機「ルナ16号」です。打ち上げられたのは1970年で、アポロのあとなのです。実は旧ソ連は、アポロ11号の月探査(1969)以前に月のサンプルリターンを無人機で行おうとしたのですが、残念ながら失敗したために世界初にはならなかった。冷戦のさなかですから、「どうして有人で行うのか」ということに対して非常に大きなメッセージ性はあったはずですが、残念ながら成功しませんでした。ですが翌70年にルナ16号が月面着陸し、サンプルを採取して、地球に帰還させています。
実際に旧ソ連によるサンプルリターンは何回か成功していますが、実際にこういった活動が行われたことは非常に重要だと思います。先ほどお話ししましたが、有人活動でなければならないかどうかに対する一つの大きなメッセージでもあるし、無人探査は非常に高度な技術を要するので、それが実際にできることを示したのは素晴らしいものでした。
●日本や中国もサンプルリターンに貢献
川口 サンプルリターンの対象はその後、小天体に移っていきます。下の2枚の写真は小惑星探査機「はやぶさ2」によるものです。上はNASAの探査機「オサイリス・レックス」で、「はやぶさ2」が打ち上げられたあと、アメリカが小惑星のサンプルリターンを行いました。「オサイリス・レックス」も「はやぶさ2」もミッションを成功させたので、非常に喜ば...