米国システムの逆襲~解放の日と新世界秩序
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
関税発動をめぐるホワイトハウス内派閥抗争と対日圧力
米国システムの「解放」と逆襲(3)「解放の日」の戦略的意義と派閥抗争
東秀敏(米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー)
財政破綻を防ぐことがその目論みとしてあったトランプ政権の関税政策。その発動をめぐっては、ホワイトハウス内でも派閥抗争があった。ナショナリスティックな政策に傾くトランプ政権が日本に向ける視線は厳しくなることが必至であり、日本は対米姿勢の見直しが迫られている。(全3話中第3話)
時間:11分47秒
収録日:2025年4月25日
追加日:2025年6月3日
カテゴリー:
≪全文≫

●財政破綻の回避を目論んだ関税発動


 解放の日の戦略的意義を考察したいと思うのですけれど、まず解放の日というのは、米国システムの観点から見ますと、まさに米国システムを復活させるために無理やり作った一つのきっかけなのです。これは同時に経済戦争でもあって、世界に対してアメリカが経済戦争を仕掛けたのです。つまり、この第1発目をアメリカが撃ったということなのです。

 しかし、ここで喫緊の課題として余り語られていないのですけれど、これはアメリカの財政破綻の回避というのもアジェンダとして彼らの中にあるわけなのです。

 今年(2025年)は、約7兆ドル分の米国債の満期が到来して、従来の経済政策ではもう財政破綻は不可避であるという問題もあり、ここで関税の連発という荒業で意図的に市場を暴落させて、米国10年国債の利回りを下げることが真の狙いです。しかし、これは短期的なアジェンダなのです。つまり、関税で市場を暴落させて、そしてFRBに対して低金利を迫り、強引にドル安を誘導するという構図なのです。

 対中デカップリングは、たしかに重要なのですけれど、今回の関税はどちらかというと二次的な意味合いを持っています。しかし、全世界に対して関税を発動したことによって、日本を含むいろいろな諸国を強引に交渉のテーブルに着かせて、中国の支配から隔離させるということも一つの議論としては挙がっていました。

 例えば、ベトナムがすぐに関税ルールをトランプ大統領と交わしました。アジアの国では、おそらくベトナムが初めてだったのですけれど、こういう副次的な効果もあらわれていますが、対中デカップリングというのは、どちらかというと二次的なもので、やはりアメリカの財政破綻をいかに回避するか、これがもう彼らの頭の中にいっぱいあったということなのです。


●関税発動をめぐるホワイトハウス内の派閥抗争


 実はこの解放の日の関税発動に関して、派閥抗争がホワイトハウスの中にけっこうあり、この派閥抗争を簡潔にまとめますと、MAGA(Make America Great Again)派とウォール・ストリート(WS)派の派閥抗争という見方もできます。このMAGAの派閥なのですけれど、これはどちらかというと思想的には経済国家主義、エコノミック・ナショナリズムという思想があ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓