アンチ・グローバリズムの行方を読む
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
『ヒルビリー・エレジー』が示す私たちの知らないアメリカ
アンチ・グローバリズムの行方を読む(2)アメリカの闇
アメリカは、もはやこれまでにはない新しい時代に入っている。特に中西部の白人男女を中心とする大衆の悲痛な叫びが、東部のインテリやリベラル派への反感とともに、トランプ支持の強力な地盤をつくっていった。他方でその根底にある格差という問題は、グローバリズムの中で難しい局面に立っている。(全6話中第2話)
時間:11分04秒
収録日:2019年11月7日
追加日:2019年12月7日
カテゴリー:
≪全文≫

●私たちが知らないアメリカの姿


岡本 米中関係を考える前にアメリカの話をしたいと思います。誰の言葉か知りませんが、「アメリカは第2段階のポピュリズムに入っている」という点は、僕も、伊藤さんがおっしゃった通りだと思っています。トランプを支持している43パーセントほどの岩盤支持層といわれる人たちは、ずっとアメリカにいた人たちです。われわれはそれを知らなかっただけです。

 僕は最近、MITに籍がある関係でボストンによく行くのですが、前回の大統領選挙の前に、100人~200人の人たちと選挙談義をしました。1対1だけでなく、みんなでワイワイとパネルディスカッションのようなことも含めたら200人ほどいたでしょう。しかし、そのうちのただの一人も、「自分はトランプ支持者だ」と言った人はいませんでした。

 みんな言いたくなかったのでしょう。特にボストンのような雰囲気の場所では、そう言い出すのは自分の知性に反すると思っていたのかもしれません。それで、恥ずかしいことに僕は知らなかったのです。実はアメリカの半分近くの人たちは中西部の白人で、低学歴・低収入、そしてモビリティもほとんどない空間で暮らしています。こうした人たちがアメリカのバックボーンといわずとも、非常に大きな塊として存在するのです。

 トランプ氏は、この人たちを浮かび上がらせたわけですよね。それをわれわれは初めて知りました。最初は、「どうせ政治的な意思の表現も方法も知らないだろうし、投票にもいかないだろう」とたかをくくっていたら、この人たちが大きな政治的な動きをつくり出すようになってきたわけです。

 ですから、もうアメリカは「一線を超えた」といえるかもしれません。東部のインテリやカリフォルニアのリベラル派の人たちがアメリカを導いていくという時代には、もう戻れなくなったと思います。そのため、そういった、今まで置き去られてきた大衆や一般の人たちが、これからアメリカをどう動かしていくかということを常に考えなければなりません。未知数なところもありますし、われわれの今までの通念ではダメだと思うんです。


●白人女性たちの悲痛な叫びもトランプ支持に繋がった


岡本 あの時に、どういう人たちがトランプ氏に投票したかということを僕は詳しく分析してみたのです。そうしたら、非常に大きなブロックにいたのが白人女性でした。人種・性別で分けると、白人...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治