●私たちが知らないアメリカの姿
岡本 米中関係を考える前にアメリカの話をしたいと思います。誰の言葉か知りませんが、「アメリカは第2段階のポピュリズムに入っている」という点は、僕も、伊藤さんがおっしゃった通りだと思っています。トランプを支持している43パーセントほどの岩盤支持層といわれる人たちは、ずっとアメリカにいた人たちです。われわれはそれを知らなかっただけです。
僕は最近、MITに籍がある関係でボストンによく行くのですが、前回の大統領選挙の前に、100人~200人の人たちと選挙談義をしました。1対1だけでなく、みんなでワイワイとパネルディスカッションのようなことも含めたら200人ほどいたでしょう。しかし、そのうちのただの一人も、「自分はトランプ支持者だ」と言った人はいませんでした。
みんな言いたくなかったのでしょう。特にボストンのような雰囲気の場所では、そう言い出すのは自分の知性に反すると思っていたのかもしれません。それで、恥ずかしいことに僕は知らなかったのです。実はアメリカの半分近くの人たちは中西部の白人で、低学歴・低収入、そしてモビリティもほとんどない空間で暮らしています。こうした人たちがアメリカのバックボーンといわずとも、非常に大きな塊として存在するのです。
トランプ氏は、この人たちを浮かび上がらせたわけですよね。それをわれわれは初めて知りました。最初は、「どうせ政治的な意思の表現も方法も知らないだろうし、投票にもいかないだろう」とたかをくくっていたら、この人たちが大きな政治的な動きをつくり出すようになってきたわけです。
ですから、もうアメリカは「一線を超えた」といえるかもしれません。東部のインテリやカリフォルニアのリベラル派の人たちがアメリカを導いていくという時代には、もう戻れなくなったと思います。そのため、そういった、今まで置き去られてきた大衆や一般の人たちが、これからアメリカをどう動かしていくかということを常に考えなければなりません。未知数なところもありますし、われわれの今までの通念ではダメだと思うんです。
●白人女性たちの悲痛な叫びもトランプ支持に繋がった
岡本 あの時に、どういう人たちがトランプ氏に投票したかということを僕は詳しく分析してみたのです。そうしたら、非常に大きなブロックにいたのが白人女性でした。人種・性別で分けると、白人...