●日本企業の問題点
岡本 もう1つ言いたいのは、企業が早く目覚めて、内部留保よりは新しい投資に使うべきだということです。これまで、新規投資は減価償却の範囲内にとどまっているのです。
伊藤 おっしゃる通りです。
―― 日本企業について伊藤先生にご意見を伺って、それで終わりにしようと思います。今、岡本先生から日本企業がこれからすべきことについてお話しいただきましたが、伊藤先生はどう思われますか。
伊藤 いろいろな議論があります。少し語弊がある言い方かもしれませんが、日本の企業、特に大企業は優秀な人材とお金を抱え込んでしまって、外に出していません。本来どこの国を見ていても、お金は回っています。そのため、新規のところに回っていくような形にならなければいけません。そういう意味では、日本企業はお金を抱え込むことに対して、もっと投資しましょうというよりは、もう少しいろいろとシステムを検討したり、変化といったものが必要だと個人的には思います。ただ、それをどうしたらいいのかということは、よく分からないというのが現状です。
企業の人たちと議論をするといつもすごく感じるのは、基本的な経営方針としては、私からも違和感のないことを描いているのですが、そこに向かっていくスピード感が足りないということです。今の中国やアメリカが1年かけて行っていることを、10年かけるようなペースになっています。だから、そういう意味では、危機感を持っているかどうかというのが重要な気がしますね。
●日韓関係は最も困難な問題である
伊藤 先ほどのアジアのお話の中に関連して、日韓関係というのはいかがでしょうか。どうしたら良いのか、どうなっていくのかという問題です。
岡本 韓国は大事な国です。だけど難しいですね。日本が抱える外交課題の中で、最も難しいのは、韓国との関係じゃないですか。韓国以外の国の場合、相手の意図が大体分かります。中国ですら、2005年、2012年と大規模な反日デモが起こりましたが、それぞれ意図が分かるものでした。あれは政府が裏でそそのかしていたという証拠が出てきています。特に2005年のデモは、日本の安保理常任理事国入りキャンペーンに対し、その動きを潰すためになされたものでした。「これほど日本は若者たちに嫌われている国なんだ」ということを世界中に伝えたかったのです。
このように「なぜこの政策を取っているのか」ということが他国については分かるのですが、韓国は分からないんです。その意味では、韓国の歴代の大統領は、政権維持のために、反日感情を煽ることを逃げ道にして、利用しているのではないかと思います。その点では、金大中大統領は立派だったと思います。
伊藤 一緒に行ってお会いしましたね。
岡本 そうですね。彼は1998年に日本に来て、「歴史の幕を閉じましょう。新しい時代に向かっていきましょう」と宣言しました。その時、僕は本当に感動しました。でもその後、盧武鉉政権が全部その机をひっくり返してしまいましたし、李明博大統領や朴槿恵大統領と続いても、結局は自分たちの政治的な支持が落ちてくると、反日カードを切ってくるわけです。朴槿恵大統領に至っては、就任直後から「加害者と被害者の関係は1000年変わらない」という演説を行いました。
そうして韓国の若者たちを煽っているとなると、「じゃあ何をやったら良いのですか」という話になります。たとえ合意をしても、慰安婦問題もそうですが、結局ひっくり返ってしまうわけです。一体どういう道筋をたどって、最終的な和解に至るのかについては、韓国との場合には立てられないんですね。
徴用工の問題も同様です。時間がないので詳しくは言いませんが、単に1965年の請求権協定で処理されているという問題だけではなくて、韓国が言っていることは実態上無茶なものです。
●日本は自身の言い分を積極的に発信していくべきである
岡本 そのため、われわれがこうした問題にどう対応すべきかという点に関しては、僕は正直、もう韓国を説得するのは不可能なのではないかと、半ば諦めかかっています。では何をすればいいか。韓国は今、海外で反日キャンペーンを広げています。例えば、アメリカのいろいろな場所で慰安婦の少女像を建設しています。そのキャンペーンで、一番激しい活動を行っているNGOが主張していることは、歴史的な事実関係からすればおかしいことですが、それをそのまま言っています。これが続けば、アメリカの間でも日本は完全な悪者になってしまいます。こうした部分について、日本は自身の立場を伝えていくべきだと思います。
「何を言っても反撃される」「怒りが向こうで増幅されるだけだから、黙るのが良いのだ」という考えが、政治的な知恵みたいになっていて、日本は自分たちの立場を外に発信してきていない...