デモクラシーの基盤とは何か
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
全体主義の暴力とは集団のアイデンティティで人を扱うこと
デモクラシーの基盤とは何か(1)全体主義の暴力
ハンナ・アーレントが批判した全体主義の本質とは何か。その答えは、アーレントが「ユダヤの娘として」考えるよう批判された際の応答に詰まっている。全体主義の暴力の本質とは、「集団的アイデンティティによって人を扱う」ことにこそあるのである。一方、アメリカの建国の父たちが考えた民主主義のあり方とはいかなるものだったのだろうか。(全3話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:9分46秒
収録日:2024年9月11日
追加日:2025年5月9日
≪全文≫

●その人の社会的属性で人を判断することの危険


―― 先生、(前回までのシリーズ講義「危機のデモクラシー…公共哲学から考える」)どうもありがとうございました。

齋藤 ありがとうございます。

―― 今回、楽しみにしておりました。最初に補足で少し教えていただきたいのですけれど、ハンナ・アーレントについて、『エルサレムのアイヒマン』のあたりでユダヤ社会から総スカンをくらったというのは、具体的にどんな感じだったのでしょうか。

齋藤 ユダヤ人の(場合)は、そのリーダーたちがナチに協力しているのです。だから、自分たちのコミュニティからユダヤ人をその後、強制収容所とか、絶滅収容所に行くわけですが、その選別を行ったりするのです。そのことを、あるいは実際に収容所においても「カポ(Kapo)」と呼ばれるユダヤ人が、直接のコントロールに当たっていたということもあって、そんなに無垢ではなかったという、そのことだけなのです。

 ただ、ゲルショム・ショーレムという、ユダヤ神秘主義の大思想家がいますけれど、アーレントに手紙を送って、「あなたにはユダヤの娘として考えてほしいし、ものを書いてほしい」と手紙を書いたのです。

 アーレントはそれに直に応答します。私は(ユダヤ共同体を含む)共同体の一員としてものを書いたり、考えたりはしないと返すのです。

―― 素晴らしい返し方ですね。

齋藤 ええ。

―― ヒトラー政権ができて、難民になって亡命して、アメリカで市民権が出たのが1951年です。それだけの間(があった)にもかかわらず、ものすごく強烈な意志ですね。

齋藤 そうですね。何らかの集合的なアイデンティティにおいて人を扱うということ、これが全体主義の暴力です。何をしたか、何を語ったかではなくて、その人の社会的属性が何であるかによって人を判断してしまう。ユダヤ人であるとか、あるいは同性愛者であるとかという集合的な属性で人々を扱ったというのが、全体主義のもっとも悪いところの1つです。

―― なるほど。

齋藤 だから、その集合的なアイデンティティによって自分も他者も拘束しないということです。

―― でも、これ(アーレントの応答)はすごい(こと)ですね。

 最近でいくと、私は2024年7月10日からニューヨーク、ワシントン、それからボストンに行き、特にボストンでハーバードとMITでディーンの人たちと話をしてい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
ロボットの「カンブリア爆発」時代へ電動化がもたらすもの
岡本浩
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(5)陰陽と東洋思想を知ることの意味
『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味
田口佳史
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(2)国家戦略目標の転換
経済発展から「国家の安全」へ…転換された国家戦略目標
垂秀夫