●アメリカ史の根幹に関わる各州と連邦の関係
―― (前回)お話しいただいた「四つのアメリカ」でいうと、「テンミニッツTV」では橋爪大三郎先生が「アメリカの教会」という講義をなさっています。宗教というよりも教義ごとに入植したところがあるので、地域ごとにだいぶ色合いが違うというお話もされていました。さらに今、中西先生のお話しくださったような違いが明確にある中で、それぞれのまとまりごとに州をつくっているところもあります。合衆国ということで、一つの連邦国家を形成していると。
それが今のアメリカの姿であるということを考えると、この連邦制、特にアメリカにおける州と連邦政府の関係や意思決定のあり方について、日本人も少しは理解しておいたほうがいいのだろうかと思います。先生は、アメリカの各州と連邦の関係については、どのようにお考えでしょうか。
中西 これはアメリカ史の根幹に関わる問題です。どういうことかというと、先ほど申し上げたようにアメリカに最初に植民した人たちが、それぞれ別個に国をつくっていったからです。
今回冒頭で詳しく触れましたが、イングランドのピューリタンたちは、主として今日の区分でいうマサチューセッツに入植しました。マサチューセッツというのは、昔はずいぶん広かったのですが、そこからどんどん狭まり、今のマサチューセッツ州のような存在になりました。このマサチューセッツ州は、独立戦争のときに定められたものです。
例えば、ニューハンプシャーでは、大統領の予備選が2番目に行われます。ニューハンプシャー州の他、バーモント州やコネチカット州などもニューイングランドに入ると思いますが、これらの地域は、主としてピューリタンが植民したところであり、それぞれイギリスから移民を連れてきたときにそれぞれの集団がつくられていたわけです。ですから、ニューハンプシャーに入った人たちとマサチューセッツに入った人たちは少しずつ違います。
私は長い間、イギリスのイングランド地方南部、イースト・アングリアにあるケンブリッジ大学にいました。イースト・アングリア地方からは、大半がニューイングランドに移っています。彼らはほとんどピューリタンです。丸々1個の農場をそのまま船に乗せて、牛や馬も連れていく。教会の牧師はもちろん、指導者も地主も農民も小作人も、鍛冶屋もパン焼き職人も、ありとあらゆる人た...