地政学入門 歴史と理論編
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日独がユーラシアを席巻!? リムランドをめぐる米国との攻防
地政学入門 歴史と理論編(6)「リムランド」のせめぎ合い
小原雅博(東京大学名誉教授)
世界の主導権を握るための重要エリアとして地政学的に提唱されたのは「ハートランド」だが、第2次世界大戦期においてスパイクマンがより重要なエリアとして論じたのは「リムランド」だった。第1次世界大戦後から第2次世界大戦期におけるアメリカやイギリスといった大国の動きを、リムランドをめぐる攻防の観点から読み解く。(全7話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分53秒
収録日:2024年3月27日
追加日:2024年6月4日
≪全文≫

●ハートランドより重要な「両生類」のリムランド


小原 時代の流れももちろんあるわけですけれど、1919年というと第1次世界大戦が終わった後ですが、そのときにマッキンダーが唱えたハートランド、それからスパイクマンの時代になってくると、第2次世界大戦があるわけです。スパイクマンからすると、大事なのはハートランドではなくてリムランドなのです。

―― リムランド。

小原 はい。リムランドは、ご覧になったら分かるように、ハートランドの外側に拡がる地帯なのです。

―― よく太鼓で「リム」といいますけれど、この縁のところがリムということですね。

小原 そうですね。イギリスと日本は、ご覧になったら分かるように少し色が違います。

―― はい。

小原 これはよく誤解されているのですけれど、教材でも間違えてリムランドになっていますが、スパイクマンは、日本とイギリスはリムランドではないと考えました。「リムランドの外にあるアイランドである」ということで位置付けていて、リムランドというのは、イギリスも日本も、それからその外にあるアメリカもそうなのですが、シーパワーとハートランドというランドパワーの間に位置するバッファーゾーンであるということを彼はいうわけです。

 別の言葉を使うと、彼は両生類だといいました。だから、先ほど川上さんが「ランドパワーでありながら海もありますよね」「シーパワーになる可能性もありますよね」という話をしましたが、歴史的にドイツの話もしましたけれど、今、中国がまさにそういったことで、両生類なのです。

 だから、陸も海も両方いけるわけです。それを押さえるためにイギリスは参戦もしたし、アメリカも参戦しました。

 つまり大事なのは、リムランドという、非常に豊かで、農耕にも適して人口も密で資源にも恵まれている、交易もできる地域が、ハートランドよりも実は重要性が高くて、ここをどこかの国が支配する、あるいは複数の国が同盟となって支配すると、アメリカにとっては非常に危険なことになります。つまりユーラシアを制した国が、そこからユーラシアの中での勢力均衡、あるいはそこでの対立紛争というものがなくなって統一をしてしまえば、外に力を放射できるわけです。


●リムランドの主導権を他国に握らせたくないアメリカの戦略


小原 そうすると...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治