●古代ギリシアの「シーパワー」と「ランドパワー」
小原 ということで、(地政学についての)3つの柱について先ほど(第1話で)話をしました。「大国の競争」ということ、それから「ユーラシア」についてもいいましたけれど、ユーラシアの一部について、歴史的な経緯で「シーパワー」「ランドパワー」ということから話を進めてみたいと思うのです。
―― はい。
小原 この図は、古代ギリシアでアテナイというシーパワーと、スパルタというランドパワーが長い戦争をしたわけです。「ペロポネソス戦争」といわれています。
ご覧になって分かるように、アテナイの場合には、海の沿岸部に広がっているわけです。ペルシャにまで広がっています。これは、ペルシャとの戦争があって、それに勝利した最大の勝因というのでしょうか、これがアテナイの海軍力だったのです。アテナイが海戦でペルシャを破ったということが非常に大きいわけです。その後に、ギリシアの覇権をめぐって、陸軍の非常に強いスパルタと、それから海軍力の強いアテナイが衝突をするわけです。
このペロポネソス戦争を描いた戦史があるのですけれど、これを描いたのが、ここに写真も映っている、トゥキディデスという、当時のアテナイの将軍だったのです。彼が自分で見聞したことを書いた古典です。
これを読み、1つの教訓としてよくいわれるのが、ここに書いてあるように、アテナイのパワーの増大と、スパルタへの恐れというものが戦争を不可避にしたのだということです。ここにもアテナイのパワーの増大とあり、あとで理論のところでも少し出てきますけれど、それが領域の拡大ということに出てくるわけです。また、先ほど(第2話で)「人間の本性」という話もしましたけれど、スパルタの恐怖というものを生んだと。(つまり)力の増大と、それ(スパルタ)に対する恐怖というものが戦争というものを不可避にしたのだという結論を、トゥキディデスは戦史の中で書いているわけです。
私は地政学の観点から、もう1つの教訓をここで言いたいのです。それは何かというと、その後も、地政学という観点の特徴であるシーパワーとランドパワーの戦いがずっと続いてきているということです。これ(ペロポネソス戦争)は、最初のある意味でシーパワーとラン...