地政学入門 歴史と理論編
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ペロポネソス戦争でのアテナイの失敗…地政学から見た教訓
地政学入門 歴史と理論編(4)シーパワーとランドパワーの教訓
小原雅博(東京大学名誉教授)
古代ギリシアでアテナイという「シーパワー」と、スパルタという「ランドパワー」が長い戦争をした「ペロポネソス戦争」がある。当時のアテナイの将軍・トゥキディデスによると、アテナイのパワーの増大とスパルタへの恐れがこの戦争を不可避にしたということだが、その後の歴史を見ていくと、もう一つ大事な教訓が地政学の観点から導き出せる。それは何か。国の繁栄にも大きく関わるシーパワーの重要性を解説する。(全7話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分26秒
収録日:2024年3月27日
追加日:2024年5月21日
≪全文≫

●古代ギリシアの「シーパワー」と「ランドパワー」


小原 ということで、(地政学についての)3つの柱について先ほど(第1話で)話をしました。「大国の競争」ということ、それから「ユーラシア」についてもいいましたけれど、ユーラシアの一部について、歴史的な経緯で「シーパワー」「ランドパワー」ということから話を進めてみたいと思うのです。

―― はい。

小原 この図は、古代ギリシアでアテナイというシーパワーと、スパルタというランドパワーが長い戦争をしたわけです。「ペロポネソス戦争」といわれています。

 ご覧になって分かるように、アテナイの場合には、海の沿岸部に広がっているわけです。ペルシャにまで広がっています。これは、ペルシャとの戦争があって、それに勝利した最大の勝因というのでしょうか、これがアテナイの海軍力だったのです。アテナイが海戦でペルシャを破ったということが非常に大きいわけです。その後に、ギリシアの覇権をめぐって、陸軍の非常に強いスパルタと、それから海軍力の強いアテナイが衝突をするわけです。

 このペロポネソス戦争を描いた戦史があるのですけれど、これを描いたのが、ここに写真も映っている、トゥキディデスという、当時のアテナイの将軍だったのです。彼が自分で見聞したことを書いた古典です。

 これを読み、1つの教訓としてよくいわれるのが、ここに書いてあるように、アテナイのパワーの増大と、スパルタへの恐れというものが戦争を不可避にしたのだということです。ここにもアテナイのパワーの増大とあり、あとで理論のところでも少し出てきますけれど、それが領域の拡大ということに出てくるわけです。また、先ほど(第2話で)「人間の本性」という話もしましたけれど、スパルタの恐怖というものを生んだと。(つまり)力の増大と、それ(スパルタ)に対する恐怖というものが戦争というものを不可避にしたのだという結論を、トゥキディデスは戦史の中で書いているわけです。

 私は地政学の観点から、もう1つの教訓をここで言いたいのです。それは何かというと、その後も、地政学という観点の特徴であるシーパワーとランドパワーの戦いがずっと続いてきているということです。これ(ペロポネソス戦争)は、最初のある意味でシーパワーとラン...

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