独裁の世界史~ギリシア編
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ペロポネソス戦争の勝利がスパルタにもたらしたもの
独裁の世界史~ギリシア編(8)ポリス社会の変質
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
ペロポネソス戦争はアテネとスパルタという二大ポリスの対立に始まる。20年以上にもわたるこのギリシア「世界戦争」は、ポリス社会にさまざまな衰退をもたらした。スパルタの凋落、傭兵の出現とともに、ポリスの意味は変質していく。(全11話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分15秒
収録日:2019年12月3日
追加日:2020年4月4日
カテゴリー:
≪全文≫

●ポピュリズムに走ったシチリア遠征の失敗


本村 ペロポネソス戦争の勃発が紀元前431年で、翌年疫病が流行し、429年にペリクレスが亡くなります。彼のリーダーシップの下にうまく機能していたアテネのポリスの運営でしたが、その死後は彼の下にいた政治家や軍人のような人々が発言することになってきます。

 それが、クレオンなどのアジテーターたち、ニキアスやアルキビアデスのような、ペリクレスとは比べるのもかわいそうなような政治家たちです。彼らは、今でいうポピュリズムに走ります。ポピュリズムというのは、民衆を説得しきれないので、民衆が喜びそうな話をどんどん持っていくようなことです。

 そのなかでも、シチリア遠征の失敗が特に大きくいわれます。シチリアは穀倉地帯ですが、アテネ・スパルタ・シチリアという位置関係であるため、シチリアとスパルタはかなり密接な仲でした。だから、スパルタの勢力をそぐためには、シチリアを叩けば穀物が輸入できなくなるだろう。「彼らのつながりを断つために、シチリアに遠征しよう」とアルキビアデスのようなアジテーターたちが主張し、その意見が通りました。

 アテネは元々海軍主義を採っていたこともあり、大艦隊を組んでシチリアのシラクーサというところに行くのですが、これが思っていたようにうまくはいかない。結局、長い間そこに滞在して、艦隊を留めます。艦隊というのは狭いところで生活しているため、なかの兵士たちから不満が出てきたり、病気も流行したりということが起こってきます。

 結局シチリア遠征は大失敗に終わってしまい、何も成果なしに戻ってこざるを得ないことになってしまいます。


●スパルタはペロポネソス戦争の勝利によって何を失ったのか


本村 この後もいろいろ戦いがありますが、このシチリア遠征の失敗が大きな契機となり、アテネは坂を下っていくようにずるずる負けが続いていくことになります。最終的にはアテネが凋落してスパルタが勝利を収めるというのが、ペロポネソス戦争の経緯です。

 ただ、この間に何度も何度も繰り返しで20数年がたっています。古代の戦争というのは1年中やっているわけではなく、夏のシーズンに戦っては冬は休戦状態といった感じでした。そういう形でアテネが凋落し、スパルタが勝利を収めるということになります。

 それ以後アテネが凋落したのに代わり、勢力を持ったスパルタ...

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