独裁の世界史~ギリシア編
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民衆の意識を変えたペルシア戦争での「サラミスの海戦」
独裁の世界史~ギリシア編(6)ペルシア戦争の意義
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
「クレイステネスの改革」によりデモクラシーの形式が整えられたアテネで、民衆たちの間に「デーモス」が国を担うという自覚を植え付ける契機となったのは、ペルシア戦争での「サラミスの海戦」だった。戦争が民衆の自覚を促したわけだが、それはどういうことなのか。(全11話中第6話) ※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分45秒
収録日:2019年12月3日
追加日:2020年3月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●民衆に「国家の担い手」意識を与えたペルシア戦争


―― 「クレイステネスの改革」によってデーモスが整備されていくなかで、前回にも触れられたペルシア戦争が起こってきます。ここの流れは、どういう形になっていくのでしょうか。

本村 「クレイステネスの改革」では、要するに形式的・制度的なことをある程度つくり上げました。ところが、制度や形式をつくっても、物事が実質的に機能するかというと、歴史のなかではなかなかうまくいっていないのです。それは「区民」である民衆が、「自分たちは新しい国家を運営する」という自覚を持っていないからです。

 その頃はデモクラシーという言葉をはっきり言ったとは思いませんが、それでも、「民衆の力」、民衆が中心になって国家を運営するのだということをもっと自覚しなければいけない。なぜなら、それまでは当然ながら王や貴族のような有力者がいて、最後には僭主が出てきて、そういう人々が実質的に権力を握って動かしていたわけです。

 ところが、「クレイステネスの改革」によって、形式的・制度的にはそうではなくなった。民衆を抱き込み、「民衆を中心にした国家をつくるのだ」と言ってやっても、民衆が本当にそれを自覚しているかどうか。それが、ペルシア戦争の持った大きな意味だと言われています。


●民衆不在だったペルシア戦争の「マラトンの戦い」


本村 というのは、前半のペルシア戦争は、「マラトンの戦い」に象徴されるように、陸軍を中心とした戦いでした。そして、この時代に当然のこととして、ある種の貴族や身分の高い人々が中心になる。というのは、こういう古い時代の軍隊では武具自弁だからです。自分でそれをそろえられなければ参加できない。

 だから、当然貴族や富豪のような層が中心になって軍隊が作られるわけです。民衆が参加することがあっても、後ろで車を引いたり、荷物を持ったりという形に限られます。大方の民衆は、戦争そのものにはあまり参加していないのです。

 ペルシア戦争の前半は、そういった貴族や富豪たちの集まりとしての軍隊とペルシアとの戦いでしたが、かろうじてマラトンの戦いで最後にギリシアが勝利を収め、ペルシアは撤退します。でも、ペルシアというのは大国です。ギリシアの小さなポリスのようなものに負けたことは、彼らにとってはいつか雪辱しなければいけないこととなり、虎視眈々と狙うよう...

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