独裁の世界史~ギリシア編
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
民衆の意識を変えたペルシア戦争での「サラミスの海戦」
独裁の世界史~ギリシア編(6)ペルシア戦争の意義
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
「クレイステネスの改革」によりデモクラシーの形式が整えられたアテネで、民衆たちの間に「デーモス」が国を担うという自覚を植え付ける契機となったのは、ペルシア戦争での「サラミスの海戦」だった。戦争が民衆の自覚を促したわけだが、それはどういうことなのか。(全11話中第6話) ※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分45秒
収録日:2019年12月3日
追加日:2020年3月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●民衆に「国家の担い手」意識を与えたペルシア戦争


―― 「クレイステネスの改革」によってデーモスが整備されていくなかで、前回にも触れられたペルシア戦争が起こってきます。ここの流れは、どういう形になっていくのでしょうか。

本村 「クレイステネスの改革」では、要するに形式的・制度的なことをある程度つくり上げました。ところが、制度や形式をつくっても、物事が実質的に機能するかというと、歴史のなかではなかなかうまくいっていないのです。それは「区民」である民衆が、「自分たちは新しい国家を運営する」という自覚を持っていないからです。

 その頃はデモクラシーという言葉をはっきり言ったとは思いませんが、それでも、「民衆の力」、民衆が中心になって国家を運営するのだということをもっと自覚しなければいけない。なぜなら、それまでは当然ながら王や貴族のような有力者がいて、最後には僭主が出てきて、そういう人々が実質的に権力を握って動かしていたわけです。

 ところが、「クレイステネスの改革」によって、形式的・制度的にはそうではなくなった。民衆を抱き込み、「民衆を中心にした国家をつくるのだ」と言ってやっても、民衆が本当にそれを自覚しているかどうか。それが、ペルシア戦争の持った大きな意味だと言われています。


●民衆不在だったペルシア戦争の「マラトンの戦い」


本村 というのは、前半のペルシア戦争は、「マラトンの戦い」に象徴されるように、陸軍を中心とした戦いでした。そして、この時代に当然のこととして、ある種の貴族や身分の高い人々が中心になる。というのは、こういう古い時代の軍隊では武具自弁だからです。自分でそれをそろえられなければ参加できない。

 だから、当然貴族や富豪のような層が中心になって軍隊が作られるわけです。民衆が参加することがあっても、後ろで車を引いたり、荷物を持ったりという形に限られます。大方の民衆は、戦争そのものにはあまり参加していないのです。

 ペルシア戦争の前半は、そういった貴族や富豪たちの集まりとしての軍隊とペルシアとの戦いでしたが、かろうじてマラトンの戦いで最後にギリシアが勝利を収め、ペルシアは撤退します。でも、ペルシアというのは大国です。ギリシアの小さなポリスのようなものに負けたことは、彼らにとってはいつか雪辱しなければいけないこととなり、虎視眈々と狙うよう...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(3)ビル・ゲイツの世界戦略
「50億人を救う」と宣言したゲイツとの粋なエピソード
島田晴雄
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用
図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
中村彰彦
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦