独裁の世界史~ギリシア編
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なぜスパルタはローマのように世界帝国にならなかったのか
独裁の世界史~ギリシア編(11)スパルタとローマの違い
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
ペロポネソス戦争でアテネに勝利したスパルタは、重装歩兵が発展した形だが、市民間の平等が徹底していたことで知られる。そのスパルタがローマのように世界帝国にならなかったのはなぜだろうか。キーワードは「エリート」かもしれない。(全11話中第11話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分00秒
収録日:2019年12月3日
追加日:2020年4月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●市民間の平等を徹底したスパルタというポリス


__ あと1つ、スパルタについてもう少しお聞きしたいのですが、他に何か特徴的なことはありますか。

本村 スパルタは、そもそもラコニア一帯における支配を確立するところから始まります。非常に重装歩兵の密集部隊として、7歳ぐらいの小さい頃から訓練して、ずっと集団生活をさせます。そして、市民の間というのはもう本当に平等なのです。

 「スパルティアタイ」や「ホモイオイ」と言いますが、「ホモイオイ」というのはまさに「平等者」という意味で、市民団のまとまりとしては平等者です。ところが、その下には「ペリオリコイ」(劣格市民)なり「ヘイロータイ」(奴隷、隷属農民)と呼ばれるような身分もあるわけです。ただし、一番上の身分のなかでの民主政は、ある面ではアテネ以上に徹底していました。

―― これは戦士部隊というか、戦士軍団ということですね。

本村 ええ。そういう形で訓練して、閉鎖的にできあがっていました。ですから、小さな国で閉鎖的にやっている限りはうまくいったのですけれども、ペロポネソス戦争に勝ってしまった。そうなると、他の地域にまでにらみを効かせるために、他の地域に派兵しなければいけない。そうすると、いわゆる鎖国体制が崩れていく。と同時に、鎖国体制だからうまくいっていたスパルタ市民団の結束がだんだん弱まってくる。結局、アテネには勝ったけれども、自分の弱点に負けたみたいなところがあるのではないかと思います。


●世界帝国化できたローマとそれができなかったスパルタの違い


―― 戦士や重装歩兵がいわゆる民主主義をつくるという点では、ローマとも共通するところがあると思います。ローマがあれだけ世界帝国化できたのに、スパルタができなかった一番の違いというのは、どこにあるのでしょうか。

本村 やはり、それはスパルタが鎖国体制の市民団の結束のなかで成り立っていたからでしょう。ローマは元老院貴族と平民との違いがありますし、平等や何かをそれほど表立って言わない。そして、他のポリスや他の地域を支配すると、それらを一律の平等では扱っていません。それぞれの特徴でやらせています。

―― ローマが、ですね。

本村 ええ。ローマの場合、一般的な原則でこうと決めつけるのではなく、それぞれのポリスの特質に合わせて、条約を結んだりしています。そのように臨機応...

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