独裁の世界史~ギリシア編
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
デマゴーゴスの語源は?…民主政は「マシなポピュリズム」
独裁の世界史~ギリシア編(10)デマゴーグとポピュリズム
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
デマゴーグは「デマを流して民衆を扇動する人」と思われているが、古代ギリシアではそうではなかった。語源は「民衆を説得する人」だから、ペリクレスやテミストクレスがデマゴーグの出発点なのだ。言葉の意味を変質させたのは政治か、それとも民衆か。(全11話中第10話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分59秒
収録日:2019年12月3日
追加日:2020年4月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●「デマゴーグ」のもともとの意味は「デイモスを説得する人」


―― ペリクレスの後に続いた人々は「デマゴーグ(扇動者)」と言われます。自分の権力のために民衆におもねるというか、民衆を説得するのではなく、民衆のご機嫌をとって権力の維持をしたり、派手なことを言って耳目を集めたりする。これもやはり民主政の陥りがちな欠点のように思います。

本村 「デマゴーゴス」という言葉は、語源的に遡れば、まさに「デイモスを説得する人」なのです。だから、ペリクレスはデマゴーゴスの典型であるし、テミストクレスもいい意味で、出発点でのデマゴーゴスなのです。ところが、同じデマゴーゴスのなかに、クレオンやアルキビアデスのような後の世代の者たちが含まれるようになる。彼らは民衆の不満にうまく乗っかった言説を得意としたので、「アジテーター」という言葉に代表されるような現代的な意味で「デマゴーグ」が使われるようになります。

 今日的な意味ではデマゴーグは悪い意味で使われているけれども、出発点におけるデマゴーグは決してそうではなかったのです。今では時を経てアジテーター的な意味で使われるところに来てしまいました。ただし、ここからが白とか黒と分けられるものではないので、そこが難しいところです。

―― 難しいですね。本来はプラスの意味だったデマゴーグが転落していってしまう。これは能力に依拠しますから、能力がない人や下手に野心を持った人がそれをやると、現代的な意味のデマゴーグになってしまう、と。このあたりの危険性、制度としての不安定さのようなものがギリシア、特にアテナイの弱点だったということになるのでしょうか。

本村 そうですね。いい指導者に恵まれていれば、うまく機能するけれども、恵まれなくなるとそうではないというのは、独裁政でも同じことがいえるのではないかと思います。結局、独裁者が賢明なペイシストラトスみたいな人だったらうまくいくし、後にプラトンが「哲人皇帝」という理念を打ち出すのも、優れた見識を持った人が独裁政をやったほうがいいという考えからです。


●民主政は「マシなポピュリズム」という程度に思っていたほうがいい


本村 ポピュリズムとデモクラシー、あるいはポピュリズムと独裁政というのは、独裁政だから常に悪いというようなものではなく、むしろ民衆の問題です。私は、民主主義の定義は「マシなポピュリ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
寛政の改革・学問吟味と現代の教育改革(1)学問吟味の導入と正統性の問題
松平定信のもう一つの功績「学問吟味」の画期性に注目
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子