独裁の世界史~ギリシア編
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ペイシストラトスの僭主政治はプラトンの理想だった?
独裁の世界史~ギリシア編(4)ソロンとペイシストラトス
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
紀元前6世紀、「ソロンの改革」に続いてアテネ竿遺書の僭主であるペイシストラトスが登場する。平民の不満を解消しようと武力行使によって権力を握った彼は、プラトンが言う「哲人皇帝」に匹敵するような賢明な独裁者だったのだろうか。(全11話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分34秒
収録日:2019年12月3日
追加日:2020年3月14日
カテゴリー:
≪全文≫

●アテネの基礎を築いた最初の僭主ペイシストラトス


―― 前回はローマとギリシアの対比をお伺いしましたが、なぜローマは共和政で、ギリシアがそうではなく民主政の道になったのかということを、これからお伺いしていきたいと思います。それに向かうためにも、歴史のほうをぜひ見ていきたいのですが、まずは僭主政の時代がやってくるところですね。このあたりは先生、アテナイでいうと、どうなりますでしょうか。

本村 「僭主政」というか、最初はゆるい王政である貴族政がありました。そういう集団のなかでの争いが起こり、いわゆるスタシスの中から「テュラノス」(僭主)が登場してくるわけです。こういう僭主政が、アテネにおいてはまさに典型的な形で出てきます。

 アテネにおける最初の独裁政を樹立したのはペイシストラトスです。この時、彼は最初の段階ではかなり武力的な方法、すなわち武断政治を敷いて、自分の政敵である反対勢力を全て排除していきます。ただ、この時にペイシストラトスの考えていたことは、平民層の不満に基づいていました。彼は、自分の覇権ないし権力を確立していく段階において、彼らの不満をなんとか解消していこうとしたのです。

 ペイシストラトスという人は、アテネの国力を充実させるため、非常に熱心に努めます。このため、ペイシストラトス時代の最初の僭主政は非常にうまくいきます。この段階のアテネは、ギリシアの中で最大のポリスと言われましたが、その基礎をつくったのはペイシストラトスです。彼によって、アテネというポリスの国力の基礎がつくられました。


●ペイシストラトスの独裁政はプラトンの理想だった


本村 一方で、彼は反ポリス的な行動も取っています。民衆の武器を没収して国家の管理下に置くという、日本の刀狩りのようなことをしています。また、10分の1税を課したりもしているし、自分の親族など、息のかかった者たちをポリスの要職に配属したりもしている。このように反ポリス的、反民主的な行動も見られました。

 しかし、彼は平民の不満を基盤としてのし上がってきましたから、農民の保護育成については非常に配慮しました。また自分が僭主になるということ自体が、旧来のスタシスの状態、貴族が乱立して相争う状態を排除することでもありました。つまり、旧来の貴族支配を打倒し、彼らを黙らせたりすることを行ったわけで、そういう点で、彼は...

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