独裁の世界史~ギリシア編
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デモクラシーのもとになった「クレイステネスの改革」とは
独裁の世界史~ギリシア編(5)クレイステネスの改革
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
賢明な独裁者であったペイシストラトスの時代が終わると、僭主政に反対する「クレイステネスの改革」が起こる。「デイモス」(民衆)を中心に据えたことでデモクラシーの源と呼ばれ、「陶片追放」でも有名なこの改革は、アテネに何をもたらしたのだろうか。(全11話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分18秒
収録日:2019年12月3日
追加日:2020年3月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●ペイシストラトスの息子兄弟は、なぜ失脚したか


―― 前回は、ペイシストラトスによって制度が確立していく頃は、彼が民衆の支持を基盤にした独裁政を打ち立て、アテネの国力を増やしていった時代だというお話でした。

 さて、その息子のヒッピアスとヒッパルコスのお話が前回ありましたが、弟のヒッパルコスが死んでしまったために、兄のヒッピアスのほうも崩れていくということでした。ここは、具体的にはどういうような形で問題が起きてきたのでしょうか。

本村 これは、いわばプライベートな問題です。この当時のギリシアはホモセクシャルが当たり前のような時代でしたが、ヒッパルコスはそのホモセクシャルの関係の中に巻き込まれてしまうのです。男同士の「三角関係」といいましょうか、そのあおりで殺されてしまう、という偶然の出来事が起こったのです。お互いの勢力争いのなかで弟が亡くなったというよりも、別のファクターによって弟が死んでしまったということです。

 重要なことですが、二人でやっているときは、賢明な僭主であった父親のペイシストラトスの意向をできる限り汲もうとしていた時期でもあったのです。ところが、兄のヒッピアスだけになってしまうと、自分の独善的な思いだけを実現しようとする動きが出てきてしまいます。そのため、反対派の方から僭主であるヒッピアスを倒そうという動きが出てきて、それが、「クレイステネスの改革」と呼ばれる紀元前508年の改革になるわけです。


●排除されたヒッピアスとペルシア戦争


本村 ギリシアのポリスはローマとはかなり違っていたと思いますが、当時アテネにいられなくなったヒッピアスは、ペルシアに亡命していきます。その後、ペルシア戦争が起こると、彼はアテネのどこが弱点かというようなことを、ペルシア側に平気で教えてしまいます。それが「マラトンの上陸」の手引きになります。

 彼には、それによってアテネの特定の一派を追放し、自分がまたアテネで返り咲こうとする気持ちもあったのかもしれませんが、そういう大きな情報を平気で敵側に漏らす。これはペルシア側の話なので、ギリシア側のペルシア戦争の記録ではヒッピアスの話はあまり出てきませんが、陰ではそういうことが起こっていたのです。

―― 年代を見ると、本当に激動の様相を呈していますね。ペイシストラトスが亡くなったのが紀元前の528年~7年頃。ヒッピアス...

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