独裁の世界史~ギリシア編
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
デモクラシーのもとになった「クレイステネスの改革」とは
独裁の世界史~ギリシア編(5)クレイステネスの改革
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
賢明な独裁者であったペイシストラトスの時代が終わると、僭主政に反対する「クレイステネスの改革」が起こる。「デイモス」(民衆)を中心に据えたことでデモクラシーの源と呼ばれ、「陶片追放」でも有名なこの改革は、アテネに何をもたらしたのだろうか。(全11話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分18秒
収録日:2019年12月3日
追加日:2020年3月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●ペイシストラトスの息子兄弟は、なぜ失脚したか


―― 前回は、ペイシストラトスによって制度が確立していく頃は、彼が民衆の支持を基盤にした独裁政を打ち立て、アテネの国力を増やしていった時代だというお話でした。

 さて、その息子のヒッピアスとヒッパルコスのお話が前回ありましたが、弟のヒッパルコスが死んでしまったために、兄のヒッピアスのほうも崩れていくということでした。ここは、具体的にはどういうような形で問題が起きてきたのでしょうか。

本村 これは、いわばプライベートな問題です。この当時のギリシアはホモセクシャルが当たり前のような時代でしたが、ヒッパルコスはそのホモセクシャルの関係の中に巻き込まれてしまうのです。男同士の「三角関係」といいましょうか、そのあおりで殺されてしまう、という偶然の出来事が起こったのです。お互いの勢力争いのなかで弟が亡くなったというよりも、別のファクターによって弟が死んでしまったということです。

 重要なことですが、二人でやっているときは、賢明な僭主であった父親のペイシストラトスの意向をできる限り汲もうとしていた時期でもあったのです。ところが、兄のヒッピアスだけになってしまうと、自分の独善的な思いだけを実現しようとする動きが出てきてしまいます。そのため、反対派の方から僭主であるヒッピアスを倒そうという動きが出てきて、それが、「クレイステネスの改革」と呼ばれる紀元前508年の改革になるわけです。


●排除されたヒッピアスとペルシア戦争


本村 ギリシアのポリスはローマとはかなり違っていたと思いますが、当時アテネにいられなくなったヒッピアスは、ペルシアに亡命していきます。その後、ペルシア戦争が起こると、彼はアテネのどこが弱点かというようなことを、ペルシア側に平気で教えてしまいます。それが「マラトンの上陸」の手引きになります。

 彼には、それによってアテネの特定の一派を追放し、自分がまたアテネで返り咲こうとする気持ちもあったのかもしれませんが、そういう大きな情報を平気で敵側に漏らす。これはペルシア側の話なので、ギリシア側のペルシア戦争の記録ではヒッピアスの話はあまり出てきませんが、陰ではそういうことが起こっていたのです。

―― 年代を見ると、本当に激動の様相を呈していますね。ペイシストラトスが亡くなったのが紀元前の528年~7年頃。ヒッピアス...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史