デジタル全体主義を哲学的に考える
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ルソー型かトクヴィル型か、迫られるデモクラシーの選択
デジタル全体主義を哲学的に考える(5)一般意志とデモクラシーの問題
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
20世紀型の全体主義においては、一つの声に国民の意志を代表させることで、多様な声、さまざまな問題がかき消されてしまった。そうした動きは、現代でも中国共産党などに見られる。はたして一般意志は存在するのか。われわれはどのようなデモクラシーのあり方を目指すべきなのか。(全7話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分10秒
収録日:2021年5月27日
追加日:2021年12月3日
≪全文≫

●ルソーのいう「一般意志」は本当に存在するのか


―― 少し話題を変えて、これまで、デジタル全体主義に対抗するものとしてどういうものが望ましいかという話をしてきました。デジタル全体主義に対抗する新しい普遍的な倫理として、先生がこの『全体主義の克服』でもう一つお書きになっているのが、「一なる全体に全てを包含しようとする諸概念を批判し、より偶然や、他者に開かれた地平を示そうというものである」というお言葉です。これは分かりやすくご説明いただくと、どういうイメージなのでしょうか。

中島 ハンナ・アーレントという人が、『全体主義の起源』という本を書きます。目の前で起きたナチズムの全体主義は何だったのかを考えていく中で、例えばフランス革命をイメージして、あれは良くないと言うのです。なぜ良くないのかというと、あれは一つの声に全てを結集させてしまったというのです。

―― それはどういうことでしょうか。

中島 例えばフランス革命は、貧困をなんとか解決しなければならず、「パンをくれ」という声に全てが結集してしまいました。しかし、望ましいのはそうではなくて、複数のボイスがあることなのだと言います。単に貧困から脱却するだけが革命の目的ではありません。いろいろなことを変えなければいけなくて、いろいろな声があったはずです。その多様な声がかき消されて、一つの声になってしまったこと、それ自体が大問題なのではないかと言っていました。それを私はずっとイメージしています。やはり別の声、多様な声があったほうがいいのかなという気がしています。

―― 今、フランス革命の事例が出ましたが、フランス革命というと、ジャン=ジャック・ルソーの社会契約論があります。ご本を読んでいて、私が非常に印象深かったのが、中華人民共和国が正当化理論としていっているのが、「中国共産党こそが、ルソーがいうところの『一般意志』の体現者であるから、それは国家も凌駕して正しいのだ」という議論をしている部分です。

 この一般意志はルソー的にいうと、普遍的な理想や理性的なものになるのでしょうか。そういうものをある意味では共産党が体現しているという、この一般意志については、まさにテンミニッツTVで、川出良枝先生にご解説いただいているので、皆さんぜひご覧いただければと思いますが、そういう議論があるということで、これは一つの議論としてはあ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
『「甘え」の構造』と現代日本(2)日本人の自責意識と自由の限界
「Thank you」か「I am sorry」か…日本人の癖とは?
與那覇潤
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生