キケロ『老年について』を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ソクラテスが竪琴!? 老年から新しいことを始める柔軟性
キケロ『老年について』を読む(3)老年には体力がないのか
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
歳をとって体力が衰えるのは、当たり前のことである。「老年には体力がないのか」という問題設定に対してカトーの答えは、肉体的なことは若い頃に適わなくても、自覚的に精神を磨いていけば、歳をとってから優れた才能を発揮することもできる、というものだ。よって、大事なのは体力が衰えたときのために備えておくことである。また、「組織に属さない自分に何ができるか」を考え、鍛練しておく必要がある。組織を離れれば、自由な時間ができる。歳をとってからでも、新しいことは始められるのだ。(全9話中第3話)
時間:12分11秒
収録日:2023年6月12日
追加日:2024年1月20日
≪全文≫

●体力の衰えは、別のことで補えば問題ない


―― 続いて第2の理由は「老年には体力がないのか」という問題設定になっています。ここでまたカトーの言として、非常に印象深いことが語られています。

 「今、青年の体力が欲しいなどと思わないのは、ちょうど、若い時に牛や象の力が欲しいと思わなかったのと同じだ。在るものを使う、そして何をするにしても体力に応じて行うのがよいのだ」

 さらに、「クロトーンのミローンの言い種ほど見下げ果てたものがあろうか」と言い、1つのエピソードを出しています。

 「この男は、既に年寄ってからのことだが、運動場で選手たちが鍛錬しているのを見て、己の腕をまじまじと見つめ、涙を流しながら、『ああ、俺の腕は早(はや)死んでいる』と言ったそうな」

 このような力の部分。確かに筋肉は衰えるけれど、それを嘆くことを「なんということだ」と言っている。このあたりの体力と老年の感覚については、どのようにお感じですか。

本村 クロトーンのミローンとは、いわゆる運動競技、オリンピックか何かで何度も優勝しているような人です。だから若いときの自分の運動能力に対して、かなり自信を持っています。それがだんだんできなくなり、体力がみるみる衰えていくのを嘆く。それはカトーからすれば、「そんなこと当たり前だろう」と(笑)。

 スポーツ選手のような人たちは、例えば今のサッカー選手は30歳ぐらいになると、もう衰えます。野球選手も40歳近くになると、かなり衰えてきます。だから自分の体力が衰えたり、「こんなに筋肉もなくなって」などと嘆いても、カトーからすれば当たり前のことで、別のことで補うべく準備していれば問題ないと。その通りだと思います。

 野球選手にしても、選手としては有能だったけれど、管理職や監督としては大したことない人もいます。逆に(2023年)WBCの栗山(英樹)監督のように、選手としては大したことはなかったけれど、監督や管理職として優れた才能を持つ人もいます。

 一般に肉体的なことは若いときに敵わないことがたくさんありますが、精神的、経験的に蓄積してきたものは、本人が自覚して磨いていけば違うとカトーは率直に言っているのだと思います。


●「組織に属さないで自分は何ができるか」を考える...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
福田恆存とオルテガ、ロレンス~現代と幸福(1)曖昧になった日本人の「自然」
小林秀雄から福田和也まで、日本の文芸批評史を俯瞰する
浜崎洋介
プラトンの哲学を読む(1)対話篇という形式の哲学
ヨーロッパ哲学の伝統はプラトン哲学の脚注だ
納富信留
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(1)「断絶」を乗り越えるという主題
小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
浜崎洋介
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留
「自分をコントロールする力」の仕組み(1)自制心と目標の達成
自制心の重要性…人間は1日4時間も何かを「欲求」している
森口佑介

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(17)「過剰な良かれ」の落とし穴
【10minで考える】巨人・阿部監督の辞任と「過剰な良かれ」
テンミニッツ・アカデミー編集部
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(2)大規模言語モデルが孕む問題
AIは頭のないオウム?…AIがAIを引用する世界に創造性はあるか?
橋爪大三郎
地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か
地政学をわかりやすく解説…地政学の「3つの柱」とは?
小原雅博
ウェルビーイングを高めるDE&I(5)心理的安全性の高い組織づくり
無知、無能、邪魔!?…心理的安全性を阻害する5つの要因
青島未佳
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
AI時代と人間の再定義(6)道徳の起源から考えるAIと感情の問題
道徳の起源は理性か感情か?…AI時代に必要な思考の身体性
中島隆博
イラン戦争と終末論(1)イラン戦争の戦略的背景と米国の政策
なぜイラン戦争がこのタイミングなのか?戦略的背景に迫る
東秀敏
地政学入門 ヨーロッパ編(1)地図で読むヨーロッパ
ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係
小原雅博
もののあはれと日本の道徳・倫理(4)「なあなあ」の日本ともののあわれ
「なあなあ」と自粛警察…大和魂と漢才の対から見えるもの
板東洋介