江戸とローマ~花見と剣闘士
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
江戸時代、流行もファッションも牽引した歌舞伎の熱狂
江戸とローマ~花見と剣闘士(6)庶民の娯楽と熱狂度
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
観劇にさほど関心が高くなかった古代ローマの庶民に比べ、江戸の庶民が熱狂したのは歌舞伎。当時の「現代」が描かれた舞台を一日がかりで楽しみ、流行もファッションも歌舞伎が引っ張る時代が続いたのである。ちなみに、ローマ、特にポンペイでの剣闘士興行は、市外から一日かけて見に来る人も少なくなく、とても大がかりなものだった。(全7話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分02秒
収録日:2021年5月24日
追加日:2021年12月20日
≪全文≫

●観劇への熱意は、江戸がローマに圧勝


―― 少し話が変わりますが、日本の場合、いわゆる庶民の楽しみなり文化ということになると、歌舞伎のような演劇物や落語がありました。講談は少し後になるかと思いますが、いろいろ種類もありました。ローマでは悲劇はあまり好まれず、喜劇が好まれたというお話がありましたが、ローマの舞台文化は、どういう形だったのでしょうか。

本村 ローマの例でいくと、具体的に残っているポンペイが参考になります。ポンペイには大劇場と小劇場があって、大劇場が5000人、小劇場が2000人ぐらい収容できる規模でした。

 大劇場では、ローマのプラウトゥスなどの書いた喜劇が中心に演じられました。もちろん題材はギリシア人から借りてきていますが、ラテン語で上演したわけです。

 ポンペイに残っているたくさんの落書きを見ても、あまり演劇に熱中していた様子はうかがえません。剣闘士興行については、「誰々を応援するぞ」というようなものがたくさん残っています。そういう状況からみると、全体的にギリシア人ほど観劇には打ち込まず、熱が冷めていた様子です。それ以上に面白い戦車競走や剣闘士興行があったがために、そちらに注目が向かったのではないかと思います。


●ファッションも流行も引っ張った江戸歌舞伎の同時代性


本村 日本の歌舞伎の場合、現在でこそちょっと高尚で知的な劇だと想像されがちだけれども、それは最近のことですね。明治以降、徐々に変わってきたのでしょうけれど、江戸時代の歌舞伎というのは結局(当時の)「現代劇」なわけですよね。

 だから、目の前で起こっている事件を再現したり、何百年前の事件であっても、まさに現代劇としてやってしまう。それが受けた、というかファッションに影響しました。当時の世間では非常に目立つ新しいファッションの提案にもなったし、それを真似して町人たちがそういう服装をしてみるというようなことがあった。

 だけど、われわれの知っている歌舞伎というのは、もうそんな雰囲気は残っていないではないですか。

―― 伝統芸能になっていますね。

本村 伝統芸能ですよね。その上、言っている台詞が分からないようなものです。だから、江戸時代の歌舞伎については、今の歌舞伎から連想するのはあまりよくないのではないかと思います。

 そのぐらい歌舞伎役者の地位が高かったときの「人気度」と...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦