江戸とローマ~花見と剣闘士
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江戸とローマを比較する意味は庶民文化にある
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江戸時代と古代ローマを比較する理由…長い平和が生むもの
江戸とローマ~花見と剣闘士(1)平和な100万人都市
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
江戸と古代ローマ。時代も歴史も大きく異なる意外な組み合わせだが、「パックス・ロマーナ」といわれる長期間にわたる平和と繁栄の時代を日本に求めるなら、江戸時代が最適である。奇しくも両都市の人口は、ともに100万人規模だったという。平和と人口の集積が江戸とローマにもたらしたものは何だったのだろうか。(全7話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分29秒
収録日:2021年5月24日
追加日:2021年11月15日
≪全文≫

●長い平和を満喫したローマと江戸


本村 江戸とローマをテーマに何回かお話ししていきます。私がこのテーマに思い至ったのは、専門が古代ローマ史だということに関係があります。古代というのは、まずそれだけでも2000年の時間の幅がある。まして海外のことですから、なかなか現代日本に生きている人間には興味がわかず、たとえわいてもしっくりこないような面があるわけです。

 そういう中で、現代日本の人たちにローマを理解してもらうにはどうしたらいいのだろうと考えていた20年近く前に、これはやはり身近な日本の例と比較してみるのがいいのではないかと、ふと思いついたわけです。

 普通、二つを並べて比較する場合、片方が古代ローマですから、日本だったら古代の奈良や平安時代などに当たるのだろうと比較してみましたが、それは全然比較の対象にならない。もうまったくどのような点でも共通点がなく、違うところばかりが目立ってくる。

 はっきり言えば日本のほうが遅れているわけです。だって、日本でようやく卑弥呼が出てくるのは紀元後の3世紀頃ですが、そのときにもう古代ローマにはコロッセオもパンテオンも建っていた。200年も前に出来上がっていたという状態ですから。

―― すでに世界帝国になったあとですよね。

本村 ええ。同時代の日本では、そういうものは何もできていない。それで比較対象をいろいろずらしていくうちに、どうも江戸はローマと比較すると非常に面白いのではないかと、あるときに思いついた。それで、比較の対象になる限りで少し江戸のことも勉強してみようと思って、研究を始めたわけです。

―― 先生が江戸とローマをご覧になっていて、どういう局面が「これは似ている」というふうに一番似ているのでしょうか。

本村 そもそもの前提として、比較史をやる場合にはある種の必要条件みたいなものがあります。もちろん異質な部分もあるけれども共通項があるということです。それが、ローマの場合も江戸時代の場合も、非常に平和な時代が長く続いていること。これは非常に双方に特徴的なことではないかと思ったわけです。


●「パックス・ロマーナ」は世界史の中でも代表的な平和の例


―― 江戸は260年ほどですが、ローマだとだいたい何年ぐらいと考えればよろしいでしょうか。

本村 ローマの場合、辺境では長く小競り合いが行われていました。ローマが非常に繁栄...

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