江戸とローマ~花見と剣闘士
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
江戸とローマを比較する意味は庶民文化にある
江戸とローマ~花見と剣闘士(2)庶民文化の比較
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
ローマと江戸に共通するのは、庶民文化の隆盛である。古代ローマの前にはあらゆる学問や芸術の祖となったギリシアがあったが、ローマ市民は高尚さよりも娯楽性を求めた。大都市では戦車競走や剣闘士興行などが行われていたが、当時の人口の半分ほどが観戦できる大規模な競技場があったという。(全7話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分27秒
収録日:2021年5月24日
追加日:2021年11月22日
≪全文≫

●庶民文化が生まれる背景


―― 前回、長期間の平和と人口規模から、庶民文化が非常に発達した、という話が先生からありました。今回はその部分について話を深めていければと思います。

本村 私がこの講義を行う意味も、基本的にはそうした庶民文化の比較です。元老院貴族や武士階級の違いについては1~2回触れることがあると思いますが、全体としてはやはり庶民を視野に置いて話してみたいと思います。

―― 今の日本文化のベースになるものはだいたい江戸時代に形づくられたといわれますが、ローマの場合の庶民文化はどういうものになりますか。

本村 ローマというのは、文芸や学芸においてはやはりギリシア人に敵わなかったといえます。ギリシアのほうが先に文化を築いているし、それから皆さん振り返ってみても、哲学にしろ医学にしろ歴史にしろ、学問全体の源がギリシアです。さらにギリシア悲劇や詩のような芸術についてもそうです。ギリシアの場合、詩を遡ればホメロスの時代まで遡れる。

 それらがいまだに世界の歴然たる古典として残っているわけで、そういうものを築いたギリシア人がいて、ローマ人は彼らに倣っていったわけです。そういう中で、ローマ風の文化は、そういう高尚な学芸よりもむしろ庶民文化の中で築かれ、庶民が楽しんでいった。例えば風刺詩などがそうで、江戸時代における川柳に当たるものです。

 日本文化の中では江戸が一番国風文化の出来上がった時代とよくいわれますが、ローマでもやはり平和で安定した時期だったからこそローマ的なものが生まれました。いわゆる「パンとサーカス」の戦車競走や剣闘士興行といった庶民文化が大々的に出来上がるのも、「ローマの平和」の時代でした(もちろんギリシアの頃にも小規模にはありました)。

 庶民文化というものが生まれる背景には、庶民にそれだけのゆとりがあることが必要です。戦争があったり、食うに困ったりするようなときでは、そのような余裕はありません。それが、やはり江戸とローマを比較する大きな意味になると思います。


●大都市で行われた戦車競走と剣闘士興行


―― 戦車競走と剣闘士興行というお話が出ましたが、やはりその二つはかなり大きなものになるのですか。

本村 そうですね。「パンとサーカス」という言葉の「サーカス」は、皆さんの語感からは曲芸的なことと思われがちですが、「サーカス」の元の言...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(5)陰陽と東洋思想を知ることの意味
『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
世界のジョーク集で考える笑いの手法と精神(1)体制を笑うジョークと諷刺の精神
ジョークの精神…なぜ人は厳しいときほど笑いを磨くのか
早坂隆