ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ローマの剣闘士と江戸の花見は庶民の生活を楽しませるため
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(3)剣闘士と花見
庶民のための街づくりは、「人はパンのみにて生きるにあらず」を体現し、江戸では花見、ローマでは剣闘士などが公に準備される。為政者にとってはガス抜きの意味を持つイベントや行楽の重視は、世界史上「パンとサーカス」の名を残している。(全8話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(10MTVオピニオン編集長)
時間:13分36秒
収録日:2019年8月6日
追加日:2020年1月2日
≪全文≫

●「明暦の大火」を不燃都市志向のきっかけに


── 先ほどから保科正之の名前が出てきますが、江戸の場合、徳川家康が第一弾ロケットだとすると、さらにシステムを整えたのがこの人物になりますか。

中村 そうなんです。関ヶ原の戦いのあった1600年に江戸時代が始まったとすると、1650年代が保科正之の活躍期ですから、早くも50年で金属疲労のようなシステムの劣化が出てきているわけですね。

── 50年で、もう出てくるわけですね。

中村 ええ。それに最初の江戸は小さい都市から人口爆発が起こり、居住区も狭くなってしまいました。狭いところに家が密集しているから、大火事が起こる。保科正之の時代には「明暦の大火」といって、少なく見積もっても2~3万人、大きく見積もると10万人ぐらいが焼け死んだといわれるような大火が起こる。それは大変不幸な事態なんだけれども、新しい江戸づくりへの一里塚にもなりました。

 今までの道を広げ、道の片側だけだった下水を両側に必ずつくりました。また、よくチャンバラ映画で誰かにつけられている奴が必ず身を隠す天水桶、ああいうものを必ず置かなくてはいけないようにしました。また、上野広小路のように、大きな火が飛ばない空間を必ずあちこちにつくるようにもしました。さらに、板塀は全部石垣造りにしたり、瓦屋根を置いたり、一種の「不燃都市」を志向する人間が50年目に出てきたわけです。

 ですから、板塀と小さな垣根や何かの武家屋敷というのは50年しか寿命がなく、そのあとに不燃都市を志向した新しい江戸が出現しました。それと並行して、多摩川の水を引き込んで、庶民のための居住性をよりよくしていったのです。


●食生活への目配りはローマと江戸を比較するときの一つのテーマ


中村 この人は、為政者のための江戸をつくるんじゃなくて、庶民たちが充実した人生を送るための装置としての江戸ということを考えました。そのあたりが大した人で、今までの武断政治による考えの下ではとても出せない発想です。それまで、大名家は血統が途絶えたら、「はい、断絶」と言われ、後は飢えて死のうが関知せずという感じだったのが、突然こういうチャンネルに切り替わりました。突出した人物が出てくると歴史は変わるという例でしょう。この方の場合、江戸時代をいい方向に切り替えた、大変ユニークな日本人だと私は思っています。

本村 保科正之の時代...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
戦国大名の外交、その舞台裏(1)戦国大名という地域国家
戦国時代とは何か?意外と知らない戦国大名と国衆の関係
丸島和洋
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
編集部ラジオ2025(33)2025年を振り返る
2025年のテンミニッツ・アカデミーを振り返る
テンミニッツ・アカデミー編集部
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(3)DSA化した民主党と今後の展望
DSAの民主党乗っ取り工作…世代交代で大躍進の可能性
東秀敏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
世界哲学のすすめ(1)世界哲学プロジェクト
日本発!危機の時代に始動する世界哲学プロジェクトの意義
納富信留
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦