ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰
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「水へのこだわり」から生まれたアッピア水道と玉川上水
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(2)インフラ整備
勃興期の国家が抱える問題にインフラ整備がある。ローマと江戸は、陸路・海路に気配りするのみならず、水道の整備で有名だ。アッピア水道と玉川上水は、市を住民のために整備しようとした為政者の「きれいな水」へのこだわりが生んだ施設だった。(全8話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分29秒
収録日:2019年8月6日
追加日:2019年12月26日
≪全文≫

●「プラスアルファを重ねていく能力」は徳川家康にもあった


── 中村先生、日本の場合も、例えば室町幕府と江戸幕府を比べると、「父祖の遺風」を重んじる点では明らかに江戸幕府のほうが上だったろうと思います。これは“if”ではありますが、豊臣政権がずっと続いたとすると、江戸のような「父祖の遺風」めいたことが行われたかというと、それはどうか分からない。では、徳川幕府ではなぜ「父祖の遺風」的な要素が強かったのかというあたり、どのようにお考えですか。

中村 本村先生が言われたことと重なるのは、「オリジナリティがなくてもプラスアルファを重ねていく能力」は徳川家康にもあっただろうと思うところです。彼は織田信長と豊臣秀吉に仕えていたので、欠点も長所もよく見ていたでしょう。近くにいた家康からは、彼らが失敗した理由も分かっていたと思うのです。信長と秀吉に際立つ共通点は、今の愛知県で天下取りを始めて、京都にのし上がったところです。京都へ行くと公家に取り囲まれ、身動きが不自由な状況になってしまい、そのうちに取り込まれます。

 家康は、そうはいかない。あえて京都から離れて江戸に行き、そこに首都を建設する。なおかつ、秀吉の時代の「五大老五奉行」のようなシステムを、自分に忠誠を誓った大名たちにうまく当てはめていく。そして、これを日本中に散らばらせることによって五街道を整備する。そこを通じて献上品を運ばせるので、各地方には名産品ができる。そうすると、海路も整備しなくちゃいけないから、それが港湾設備の完成へとつながっていく。


●土木的センスが国家の安定を左右した


中村 こういう土木的な広がりが日本全体にできて、今の港湾設備や主要幹線道路の原型が出来上がっているんですね。このあたりはローマの街道整備や長大な水道づくりと少し似ているように感じます。歴史遺産がたくさんあるなか、一般庶民の生活に寄与するような都市づくりといった点では、江戸とローマが際立ちます。もちろん規模においてはローマのほうがはるかに大きかった。世界の何分の一かがローマ帝国だったわけですからね。

 私は高校の時に世界史の授業を聴いていて面白かったのが、「長距離国家」という言葉でした。アレキサンダー(帝王)が一挙に征服したのもそうだし、モンゴル帝国のヨーロッパ制圧に関しても一種の長距離国家といえそうです。

 モンゴルなどを...

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