『三国志』から見た卑弥呼
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異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
渡邉義浩(早稲田大学常任理事・文学学術院教授)
陳寿の著した『三国志』をもとに邪馬台国、卑弥呼について考えていくシリーズ講義。『三国志』は、中国二十四史の中で倭国・邪馬台国についてどの異民族よりも字数を割いて記述している特異な歴史書だと、早稲田大学文学学術院教授・渡邉義浩氏は言う。なぜ陳寿は邪馬台国をこのように重視したのだろうか。(全3話中第1話)
時間:13分50秒
収録日:2018年3月15日
追加日:2018年8月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●12000里の彼方、南の大国・邪馬台国


 こんにちは。早稲田大学の渡邉義浩です。

 私は『三国志』を中心に学問をしていますが、本日は『三国志』の一部である『魏志倭人伝』の話をしたいと思います。『魏志倭人伝』というと、日本史、あるいは考古学から語られることが非常に多いのですが、私の場合にはそういう視点ではなく、『三国志』の中から見ていくので、その視点ではこのように卑弥呼あるいは邪馬台国は見える、そういうお話になります。

 『三国志』から見た邪馬台国がどういう国であるかというと、非常に遠くて、南方にある国で、しかも大国であるということです。この「遠くて南にある大国」、それが邪馬台国なのです。具体的には魏の東南、帯方郡あたりから12000里の彼方となります。

 当時の中国の世界観は、「方万里」(方一万里)というものです。つまり、世界の中心は魏の洛陽にあり、その洛陽から三国の端まで全て5000里と見ているのです。また、その四隅を結んだ一辺が10000里の四方で囲まれているものが中国である、という考え方が「方万里」です。その囲まれた北の一辺に城があるので「万里の長城」と呼ばれるわけですが、万里の長城という言葉そのものは三国時代にはまだなく、5世紀の『宋書』に初めて出てきます。つまり、国を囲む四方の一辺が10000里であり、その端から12000里のところにあるということですから、当然非常に遠いということが分かります。

 ではどちらの方にあるかというと、会稽郡(かいけいぐん)の東冶(とうや)の海上のかなり沖の方、ものすごく南にあるということが分かります。しかも邪馬台国は方五千里と考えられています。中国が方一万里ですので、それから比べてもかなり大きな国であるということになります。人口も多くて(当時で)75万人ということですから、大国といっていいと思います。


●倭人の記述が非常に多い『三国志』


 そのようなイメージがどうやって作られていったのか、それが私の関心の中心になっていきます。そうした邪馬台国がどこに書かれているかというと、『三国志』の巻30『東夷伝』があるのですが、その中の「倭人の条」が日本でいうところの『魏志倭人伝』になります。『三国志』全体が37万字あるので、『魏志倭人伝』が2000字しかないということは、非常に少ないということです。

 しかし、2000字しかない倭人伝が、『三国志』の...

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