『三国志』から見た卑弥呼
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『魏志倭人伝』には陳寿の理念と事実が混在する
『三国志』から見た卑弥呼(2)陳寿の執筆意図
渡邉義浩(早稲田大学常任理事・文学学術院教授)
『魏志倭人伝』は『三国志』の中で倭国(邪馬台国)がどの異民族よりも圧倒的な存在感を持っていたことを表すものだが、早稲田大学文学学術院教授の渡邉義浩氏はさまざまな角度から著者・陳寿の執筆意図について論じる。注目すべきは圧倒的強さを持った魏が水軍を持たず、呉との海上戦で苦戦していた点だ。海を渡ってやってきた倭国は魏、その後の西晋にとって特別な意味を持つこととなる。(全3話中第2話)
時間:9分06秒
収録日:2018年3月15日
追加日:2018年8月24日
カテゴリー:
≪全文≫

●頻繁な使者派遣から分かる倭国と曹魏の堅密性


 倭国と曹魏(魏)は非常に密接な関係を持っています。先ほども申し上げましたが、『史記』から『明史』までの中で日本に関する列伝が含まれるものは14あり、また、異民族の中で日本に関する記録が一番多いのは『三国志』だけなのです。さらに、私は景初3年説を採るのですが、景初3(西暦239)年から正始8(西暦247)年までの9年間に倭国から曹魏に使者を派遣したのが4回、曹魏から倭国に使者が派遣されているのが2回ということになります。

 日本と中国の親しい関係というと、遣唐使のイメージが湧くのですが、実は遣唐使は約18年に1回しか行っていません。その遣唐使に対して、倭国から曹魏には4回行っています。また、遣唐使のお礼に日本まで使者が来るというようなことはそんなにはありませんでした。それに対して、倭国には使者が来ているわけです。

 そういうことを見ていくと、はるかに緊密性が高いのです。魏にとって非常に重要な国として倭国が認識されていた、ということが分かってくると思います。


●魏に対抗するため海戦に活路を求めた呉


 では、なぜ倭国が重要だったのか。それは、先ほどお話ししたように、司馬懿(しばい)が呼んできた国ということが一つ挙げられます。そして、もう一つは地理的な条件です。

 三国時代に魏、呉、蜀が戦った中で一番有名なのは、赤壁の戦いです。圧倒的に強かった魏が呉に負けるわけですが、なぜ負けたのか。単純にいうと、船の戦いであったから負けたのです。曹操の戦いの手段は騎兵を主力とした平地戦で、北の方(魏のあたり)で戦う戦い方なのです。海での戦い方は極めて苦手だったのです。逆にいうと、呉としては海で戦うことによってのみ活路があるということです。したがって、呉(孫呉)は何をしているかというと、南の方にある交州、今のベトナムの中部と考えていただいていいと思いますが、そこまで支配下に置きました。さらには扶南という国(具体的には今のカンボジアのイメージ)、そして林邑(今の南ベトナム)、そして、堂明(今のラオス)、このあたりを支配下に置きました。これら当時のベトナム、ラオス、カンボジアにあたる国々は呉に対して貢物を持っていっています。つまり、まず南に対して朝貢関係を持ったということです。

 そして、東に関しても最も重要だということで、一生懸命に探索...

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