ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
江戸時代、少年期に出世を振り分けた「御番入り」とは
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(5)人材登用制度
長期政権維持のため、江戸でもローマでも重要な役職に複数を任命する相互監視と牽制が行われた。また、江戸では優秀な人材を少年期から確保し教育する「御番入り」が幕府の官僚制を保全する。前時代的と切り捨てられるシステムに、見るべき部分も少なくないのではないか。(全8話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分53秒
収録日:2019年8月6日
追加日:2020年1月16日
≪全文≫

●共和政の複数統治と「筆頭市民」としてのプリンケプス


── 先ほど中村先生から、南町奉行所と北町奉行所の例が出ましたが、ローマの場合、長く保つための仕組みや制度についてどのようにお考えですか。

本村 大きくいうと500年続いた共和政期と、それ以後のローマ帝国になった時代があります。500年続いた共和政はとてつもない時代です。その成功要因に、前回中村先生がおっしゃったような「複数」があります。「コンスル」には二人が就任するというふうに、必ず牽制するようなつくり方がされている。もちろん「ディクタトール」というのもあって、非常事態の決定は一人で行ったほうがいいので、その任に就きますが、それも半年間に限定されました。

 そういうふうに複数でいつも牽制し合うシステムを、ローマはその一番共和政の初めにつくった。エトルリア人が王になって横暴なことをしたので、それを嫌って、共和政のシステムをつくったときに、一番トップは二人にすると決めたのです。他の法務官なども同じで、必ず複数がつくことで牽制し合うシステムにしたのは、江戸の北町奉行・南町奉行と同じです。監視し合う力が働くのが長持ちしていく一つの秘訣じゃないかと思います。

── 帝政期になると、どういうイメージになるのでしょうか。

本村 帝政期になっても、もちろんコンスルはいるんですけど、実際の権力は皇帝に集中します。だけど、皇帝は「自分が皇帝だ」なんて、誰も言いません。つまり共和政の伝統が残っているため、「自分はローマ市民の第一人者だ」。つまり、ローマ市民名簿の筆頭に来る存在です。それが「プリンケプス」で、「元首制」と訳されます。あくまでもローマ市民の第一人者であって、元老院が最終的に認めた人が正式の皇帝なんです。

 3世紀の「軍人皇帝時代」にはおびただしい数の皇帝が出てきます。70人ぐらいが皇帝を名乗ったなかで、実際に元老院が認めた皇帝は20数人でした。近代の立憲君主制ができる前の段階では、正式な皇帝を認める元老院という一つの大きなシステムがあったわけです。

 トップを決めていくには、もちろん首脳同士の間でいろいろな話し合いがあるのかもしれないけれども、ローマの場合、元老院という確固たる制度があって、そこで最終的に認可されないと皇帝になれない。それはやはり共和政的な伝統のなかで、全体の認識を得ないとトップになれないという...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦