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独裁も共和政も経験していない日本の取るべき道

独裁の世界史~未来への提言編(6)指導者としての教養とカリスマ性

本村凌二
東京大学名誉教授/文学博士
概要・テキスト
かつて独裁政が強固だった欧米では、集団合議体制としての共和政の必要性が古くから認められてきた。一方、われわれはそうした歴史的経験を持っていない。世界的に民主主義についてのマイナス面が浮上している昨今、日本はそれをどう乗り越えていくべきなのか、また指導者に求められているものは何なのか、改めて考えたい。(全10話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:08:40
収録日:2020/08/07
追加日:2020/12/04
カテゴリー:
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≪全文≫

●共和政的なものを日本で根づかせていくのは非常に困難


―― 日本にとって、今後どうしていくかというときに一つ考えられるのが(古代)ギリシアの場合、民主主義の失敗があると独裁政に行くような振り子があったことです。この振り子に非常に振れ幅があったという話は、今回の講義シリーズでも先生からご指摘をいただいています。

 世界的な流れを見ますと、今まで当然として行われてきた民主主義についてのマイナス面がいろいろ浮上しています。指導者にも、どちらかというとポピュリズム的な政治家が増えてきたところがあります。

 そういうときに、ローマの場合には元老院の政治がいいという前提があったので多少牽制できたと思います。今のこの時代において共和政的な部分をどう構築していくかというのは、けっこう難しいのかという感じがあります。

 例えば日本の近代国家で一ついえるのは、戦後も続いていることですが、間接民主政なので、選挙はするけれども基本的には代議士の人が見識を持ってやるのだという前提があったことだと思います。また、近代官僚制が一種のエリート集団としての矜持を持ってやってきたところもあると思います。

 しかし、各国がそうだと思いますが、いずれもやや信頼を失いつつあります。そのような中で、新たに共和政的なものの核をこの近代でどう構築すればいいか。そこは、先生はいかにお考えでしょうか。

本村 前々回、独裁政的なものの取り入れについて、緊急事態・非常事態の期間に限っては必要であるが、永続してはいけないという話をしました。一旦味を占めれば単独支配が起こるからなのですが、日本はその悪さもあまり見ておりません。だから、共和政的なものを日本で根づかせていくのは非常に困難です。

 かつて独裁政が強固だった欧米では、集団合議体制としての共和政の必要性が古くから認められてきました。そのことを、われわれは歴史的経験として持っていない。それをどう根付かせるのかといっても、経験としては持っていないわけだから、結局はよその国の歴史を学ぶ形になります。

 つまり、戦後のわれわれは民主主義がよくて、他は駄目だというように思ってきたけれども、どうも独裁政的なものにも、共和政・貴族政的なものにも、それぞれに良い面がある。それが戦後75年の経験の中で培われてきたことだと思います。


●良き指導者を選ぶこととカリ...

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