独裁の世界史~未来への提言編
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
緊急事態における「独裁的な要素」はどこまで必要か
独裁の世界史~未来への提言編(4)緊急事態と独裁
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
新型コロナウイルスが世界に蔓延する現在、各国政府の危機管理の方法が問われている。初動対応、平時の備え、そして政府に対する信頼感。感染封じ込め対策についてはアジアと欧米の温度差を感じる場面も多く、「独裁」の意味や意義が問い直される局面に入っている。(全10話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分53秒
収録日:2020年8月7日
追加日:2020年11月20日
カテゴリー:
≪全文≫

●緊急事態に独裁が有効な理由


―― 独裁、共和政、民主政の三つの違いについては、だいぶクリアになってきました。ここまでのお話にもあったように、今はちょうど新型コロナウイルスが世界中に蔓延している時代で、世界の国も体制によってずいぶん対応のしかたが違うところがあります。

 例えば日本ではあまりにも政治がグダグタし過ぎではないか、必要なことを早急に進めていないのではないかという話があります。逆に中国のように、かなり強権的・権威主義的に封じ込めを行ったところもあり、やはりこういうときは独裁のほうがいいのかなどという声が出たりしています。

 その反面、中国のようにAIを使った監視社会のようなことになると、さすがにあれはダメでしょうという意見があったりします。独裁的なものに対する見方が、この危機の時代において揺れているように思えます。このような危機の時代に独裁を求めるのは、人間の無意識の欲求であったり、必然であったりするようなところはあるのでしょうか。

本村 それはもう、非常事態や緊急事態のときに独裁政が有利なのは、ある意味では当たり前のことではないかと思います。事態を速く決定しなければいけないときには、できれば全能の人が一人いればいいし、有能な専門家集団がそれをサポートしてもいい。そのような形のほうが速くできるし、そのほうがいいに決まっています。技術的な手続きを踏まえて行うなどということは、もうあり得ないことです。

 だから「誰かに取り仕切ってもらいたい」というような声も出てくるのですが、規模や人口の問題がそれをさえぎります。たとえ何万人のところではできても、何百万人、何千万人になるようなところを一人で推し進めるなどということは、かなり無理があるわけです。


●ハラリの言論を超えていた「疫病」の危機


本村 非常事態の場合、独裁的な要素を制度の中でどういう形で生かしていくか。私はローマ史が専門ですが、ローマの場合は独裁官(ディクタトール)というものが半年間認められて、非常事態に対処できるようになっていました。古代の非常事態はだいたい戦争でした。

 もし、日本にもそういう制度があれば、首相なり誰か適当な方に直面する問題の対処のしかたを一任するでしょう。ただ難しいのは、感染防止対策として誰かが独裁的に振る舞うことは相応の知識を持っていればできるかもしれないけ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏