独裁の世界史~未来への提言編
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
近代人の自由と古代人の自由ではどんな違いがあるのか
独裁の世界史~未来への提言編(2)代議制によって生まれた自由
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
古代では「奴隷でない」ことが自由であり、非常時は為政者の意向に従う必要があった。近代人の自由は、より範囲が広い。だからこそコロナ禍において、われわれは不当に抑圧されている感覚を免れない。だが、そもそも「ホモ・ルーデンス」という自由を享受していた人類は、それに甘んじられるのだろうか。(全10話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分26秒
収録日:2020年8月7日
追加日:2020年11月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●代議制によって生まれた「個人の時間」


 (前回、独裁、共和政、民主政の)三つの要素について説明しましたけれども、共和政と民主政の違いということになると、代表者を選ぶ「代議制」という発想が、どうも古代人あるいは前近代全体に通じることかもしれませんが、その時代にはなかったようです。

 やはり代議制は近代になってからのことです。みんなが政治参加したとしても、人口の規模が大きくなっているし、地域の規模も広くなっているため、直接民主政のようなものはうまくいきません。そこで代議員のように、選挙で選んだ人たちが市議会議員や国会議員という形で職務に就き、政治を動かすかなりの実務を彼らに任せるということが行われるようになりました。

 そのような代議制の「恩恵」といっていいかもしれませんけれども、何がそれによるメリットかというと、そういう人たちに政治を委ねることによって、実は一般の庶民にはずいぶん時間ができるわけです。もちろん自分の生活のためにいろいろな仕事はありますが、政治に直接携わらなくていい。

 かつてのギリシアのポリスの民主政のように直接政治参加すると、聞こえはいいかもしれないけれども、自分の生活を享受するような時間はなくなってきます。近代になってから代議制というものがきちんとしてくることで、人は個人の時間を有効に使うことができるようになるのです。


●近代人の自由と古代人の自由の違い


本村 最近、私が毎日新聞で書評をした中に『近代人の自由と古代人の自由・征服の精神と簒奪』という本がありました。著者はコンスタンというフランス人で、フランス革命からそれ以後にかけて生きた人ですが、タイトル通り自由を比べている部分がありました。

 同じように「自由」といっても、古代人の自由は端的にいえば「奴隷でない」ということである。主人に仕えてはいないから、自分一人で意志の決定ができるし、個人として実践ができる。ただ、本当に自由だったかということになると、国家や公事(おおやけごと)の決定に関しては、かなり制約や圧力がありました。中心的な人物やそういう人たちの集まりが決めたことを承認あるいは追認するような形でしかなかった。本当に民衆一人一人の意見が通ることがあり得ないのは、いわば当然のことだったのです。

 つまり、古代人ないし前近代の人たちの自由は、奴隷でないから自分で自...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男