独裁の世界史~未来への提言編
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欧米の伝統に学ぶ「反独裁政」意識と集団合議制の重要性
独裁の世界史~未来への提言編(5)「独裁政は悪」という認識
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
「独裁政は基本的に悪いことだ」という認識を持っていることが大事であると本村凌二氏は言う。なぜなら、独裁者は独裁権力をなるべく持続させるため、それを阻もうとする者たちを退けようとして手段を選ばないからである。そのような暗い歴史を繰り返し経験してきた欧米では、単独支配を避け、集団合議を用いることが重要なコンセンサスになっている。しかし、緊急事態におけるカリスマ待望論もまた根強い。(全10話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分02秒
収録日:2020年8月7日
追加日:2020年11月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●独裁者が権力を延長したいのは、報復を恐れるから


―― かたや、このシリーズ講義で見てきたフランス革命やロシア革命の場合は、革命を行ったがゆえにずっと危機だった。フランスでもソ連でも革命に対する干渉戦争が起きました。国内では「危機だから独裁」という論理で独裁が先鋭化していったため、どんどん粛正や虐殺のような厳しいことが起きてしまいます。今、先生がおっしゃったように、危機においては独裁が当たり前だが、だからといって独裁がいいわけではないというのは、まさにそういう部分になりますでしょうか。

本村 その通りです。

―― 独裁者側としては比較的長期にわたって危機を演出し続けて、権力を強化し続けたいというところも多分にあると思います。そのあたりは、どのようにして阻止しなければならないと思われるのでしょうか。

本村 それは「独裁政は基本的に悪いことだ」という意識を持つことです。ローマ人がそのあたりの意識をきちんと持っていました。

―― きちんとそう思っていることが大事なのですね。

本村 独裁というのはあくまでも緊急事態・非常事態に必要なだけであって、そういうことがないほうが望ましいという捉え方です。そういう基本的な認識があるとないとでは大違いです。

 フランス革命以後の人権思想の定着した国々には、根強い伝統があります。今回のコロナや戦争などの問題が起こったときに一時的に独裁政的なものが起こっても、です。

 ではなぜ権力を延長したがるかというと、どこかで悪いことをしているという意識があり、自分たちに敵対する連中を圧殺したりするのは、権力を失ったときの怖さがあるからです。

―― つまり、その報いが自分に返ってくると。

本村 そう、これはどこでもそうです。ローマにしても、それほどひどい独裁政を取らなくても、皇帝に就くともう独裁者と見なされます。たとえ悪帝と呼ばれたネロやカリグラのような皇帝ではなくても、やはり皇帝に対して反感や違う意見を持っている人たちが当然います。そういう者たちを、どういう形で抑え込んでいるか。


●ローマ史における独裁=皇帝と元老院の攻防


本村 典型的にはハドリアヌスの場合です。五賢帝の中で3番目のハドリアヌスは、元老院貴族には最後まで嫌われていました。実は彼が皇帝になった初期の段階で、本当にトラヤヌスがハドリアヌスに皇帝の地位を譲ったのか...

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