独裁の世界史~未来への提言編
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
欧米の伝統に学ぶ「反独裁政」意識と集団合議制の重要性
独裁の世界史~未来への提言編(5)「独裁政は悪」という認識
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
「独裁政は基本的に悪いことだ」という認識を持っていることが大事であると本村凌二氏は言う。なぜなら、独裁者は独裁権力をなるべく持続させるため、それを阻もうとする者たちを退けようとして手段を選ばないからである。そのような暗い歴史を繰り返し経験してきた欧米では、単独支配を避け、集団合議を用いることが重要なコンセンサスになっている。しかし、緊急事態におけるカリスマ待望論もまた根強い。(全10話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分02秒
収録日:2020年8月7日
追加日:2020年11月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●独裁者が権力を延長したいのは、報復を恐れるから


―― かたや、このシリーズ講義で見てきたフランス革命やロシア革命の場合は、革命を行ったがゆえにずっと危機だった。フランスでもソ連でも革命に対する干渉戦争が起きました。国内では「危機だから独裁」という論理で独裁が先鋭化していったため、どんどん粛正や虐殺のような厳しいことが起きてしまいます。今、先生がおっしゃったように、危機においては独裁が当たり前だが、だからといって独裁がいいわけではないというのは、まさにそういう部分になりますでしょうか。

本村 その通りです。

―― 独裁者側としては比較的長期にわたって危機を演出し続けて、権力を強化し続けたいというところも多分にあると思います。そのあたりは、どのようにして阻止しなければならないと思われるのでしょうか。

本村 それは「独裁政は基本的に悪いことだ」という意識を持つことです。ローマ人がそのあたりの意識をきちんと持っていました。

―― きちんとそう思っていることが大事なのですね。

本村 独裁というのはあくまでも緊急事態・非常事態に必要なだけであって、そういうことがないほうが望ましいという捉え方です。そういう基本的な認識があるとないとでは大違いです。

 フランス革命以後の人権思想の定着した国々には、根強い伝統があります。今回のコロナや戦争などの問題が起こったときに一時的に独裁政的なものが起こっても、です。

 ではなぜ権力を延長したがるかというと、どこかで悪いことをしているという意識があり、自分たちに敵対する連中を圧殺したりするのは、権力を失ったときの怖さがあるからです。

―― つまり、その報いが自分に返ってくると。

本村 そう、これはどこでもそうです。ローマにしても、それほどひどい独裁政を取らなくても、皇帝に就くともう独裁者と見なされます。たとえ悪帝と呼ばれたネロやカリグラのような皇帝ではなくても、やはり皇帝に対して反感や違う意見を持っている人たちが当然います。そういう者たちを、どういう形で抑え込んでいるか。


●ローマ史における独裁=皇帝と元老院の攻防


本村 典型的にはハドリアヌスの場合です。五賢帝の中で3番目のハドリアヌスは、元老院貴族には最後まで嫌われていました。実は彼が皇帝になった初期の段階で、本当にトラヤヌスがハドリアヌスに皇帝の地位を譲ったのか...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子